いのち知らず
M&Oplaysプロデュース いのち知らず 2021年10月
大好きな岩松了さん、1年ぶりの新作・演出はSFホラーっぽい設定。信頼の歪み、生きることの不確かさを描く。時系列がどうやら入れ子構造で難解だけど、俳優陣も魅力的で、独特のヒリヒリ感に浸りました! 芝居好きが集まった感じの本多劇場、中央の良い席で7500円。休憩無しの2時間強。
どこか山深い療養所にある、従業員寮のワンセット。ロク(勝地涼)とシド(仲野太賀)が警備員として住み込んでいる。2人は中学時代から仲が良く、一緒に事業をするため資金を貯めているのだ。しかしロクが療養所で怪しい実験がおこなわれていると疑いだして、関係がひずんでいく。施設を信じる選択をするか? 亡くなった同級生への思いとは?
先輩警備員モオリ(光石研)、上司・安西(岩松)とのやりとりが、えもいわれぬ緊張を増幅する。モオリは施設への疑いを口にしたけど、本気なのか、安西は誰をどこまで監視しているのか。連絡が途絶えた兄を探しにくるトンビ(「少女ミウ」などの新名=にいな=基浩)の登場に至っては、誰と誰が実在し生きている人物なのか、曖昧になっていくほど。謎解きがないまま、やがて哀しい崩壊の気配が…
勝地、仲野が期待取りの切なさを存分に。光石はコミカルななかに、凡人の必死さをみせて安定。小太りの新名は飄々と、個性をみせる。誰もいないのに、すうっと開くドアや、壁にたてかけられたスコップの存在が不穏だ。緻密だなあ。美術は中根聡子。