ムサシ
ムサシ 2021年9月
蜷川幸雄七回忌追悼公演として、井上ひさし作、オリジナル演出蜷川幸雄の2009年初演作を、吉田鋼太郎演出で。Bunkamuraシアターコクーンの下手寄り前の方のいい席。表情が良く見えて、恨みの連鎖を断つという力強いメッセージに入り込めた。1万1000円。休憩を挟んで3時間。
冒頭、舟島の決闘場面の後、暗闇で動く竹林と寺の建屋が、後半のファンタジーを予感させる。そして6年後の鎌倉・宝蓮寺。寺開きに武蔵(藤原竜也)、沢庵(塚本幸男)、柳生宗矩(吉田)、檀那のまい(白石加代子)と乙女(鈴木杏)、平心(大石継太)が集まっていると、小次郎(溝端淳平)が乗り込んできて、果たし状をたたきつける。周囲はなんとか思いとどまらせようとするが…
再演を重ねているとあって、79歳の白石や吉田を筆頭に、手慣れた俳優陣が余裕たっぷりに笑わせ、かつ説得力を発揮。音楽・宮川彬良のタンゴにのせたダンスも軽快だ。見事なフォーメーションだなあ。
藤原が変わらず魅力的なのに加え、2010年に観たとき勝地涼が演じた小次郎役の溝端が、なかなかの切なさでよかった。小次郎の心理が焦点の戯曲だもんね。
2010年にあまり意識してなかったのは、宗矩が無類の能好きという設定で、古典芸能が重要な役割を担っている点だ。思い残しをほどく鎮魂は、芸能の原点ともいえ、日本人の精神に深く根ざす。そしてカズオ・イシグロも書いたように、和解は難しいけれど、そこを実現していかなければ未来は描けない。
剣豪や禅とかについても知識があると、もっと深みが出るんだろうな。井上ひさし、つくづく巨人です。カーテンコールでは井上、蜷川、そして8月に亡くなった辻萬長さんの遺影も一緒でした~
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