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近松心中物語

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「近松心中物語」  2021年9月

秋元松代の代表作を、4月から芸術監督に就任した長塚圭史の演出で。元禄のどろどろ心中劇が、今回は理知的な手触り。人を押し流していく宿命というものが際立つ。年配男性も目立つKAATホール、前の方やや下手寄りのいい席で9500円。休憩無しの2時間強。

近松「冥途の飛脚」がベースで、1979年初演のニナガワ版(太地喜和子・市原悦子に森進一の演歌)が伝説となり、個人的にも2018年いのうえひでのり版(宮沢りえ・小池栄子ら)を観たので、派手めのイメージがある戯曲。これを長塚版では、あえてクールに徹してみせた。物足りない印象もぬぐえないものの、突出した俳優がいないせいもあってか、現代に通じる、ごく普通の男女の愚かさが印象的だ。

三角形で組み立てたシンプルなセットに、余白の情緒が漂う。遠ーい奥から豪奢な太夫(益山寛司)が歩いてきたり、左右に郭の明かりを並べたりのシーンは、幻想的で目を奪われる。梅川・忠兵衛のクライマックス、運命の雪のセットが上から降りてくるところは、ダイナミックで意表を突かれる。冒頭とラストにポツンと出現する街灯と遊行僧の鉦の音も、近松世界と現代をつないで効果的。美術は石原敬。

忠兵衛に50両渡しちゃう与兵衛の松田龍平がはまり役だ。のっけからボソボソしゃべりで極端に覇気が無く、蜆川のドタバタから終盤に至る顛末もホントに情けなくて、泣かせます。妻のお亀は突破もんの石橋静河。「大豆田」コンビですね。
対する忠兵衛・田中哲司と遊女梅川・笹本玲奈(元ピーターパン)コンビは、郭の枕屏風の陰から飛び出してくるあたりから最期まで、絶叫調に切迫感がみなぎる。ロミジュリみたいな恋の暴走というよりも、がんじがらめのカネと世間を熟知する、大人ゆえの破れかぶれ。
ほか意地悪な八右衛門に石倉三郎、与兵衛の姑に朝海ひかる(元宝塚)、忠兵衛義母などに綾田俊樹(東京乾電池)、郭主人に山口雅義ら。

名作戯曲を今に生かす心意気に拍手。ただスチャダラパーのラップは言葉とリズムが聴きにくかったかな。よく笑う女性客もちょっと残念。

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