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砂の女

ケムリ研究室no.2「砂の女」  2021年8月

息詰まる観劇体験。あまりに有名な安部公房の原作を、ケラリーノ・サンドロヴィッチの上演台本・演出で。いやー、とにかく圧倒的な閉塞感、徒労感で、観ていてリアルに息苦しくなる。休憩を挟んで3時間弱が長かったー。男性客が目立つシアター・トラム、下手うしろの方で8800円。

趣味の昆虫採集で寒村にやってきた教師(仲村トオル)が、砂丘の底のあばら屋に女(緒川たまき)とふたり、閉じ込められる。三方を覆い、うごめく黒布と卓越したプロジェクションマッピングが描き出す、積もり続ける砂がまず怖い(映像は上田大樹・大鹿奈穂、美術は加藤ちか)。
ただサラサラと無機質で、暴力的な砂。「砂かき」を続けるだけの、先の見えない感じが、世界の、そして自分の現在とシンクロしちゃう。不条理が現実になった今。コロナにしても、アフガン情勢にしても。
希望という名のカラスは手をすり抜け、男は目鼻のない人形のように、人間性を失っていく。男が喉の渇きのあまり焼酎をがぶ飲みするシーンではホント、やめてー、余計喉渇くよー、と叫びたかった~

イライラするほど無知で、官能的な緒川が新境地かも。諦念とふてぶてしさが同居。もんぺ姿で、ずうっと作り笑いをしながら男をからめとっちゃう。そんな終始変わらない緒川に対して、仲村が上から目線で説教したり、妙に幼く脳天気だったり、めっきりくたびれたりと、熱演だ。
もっとも喜劇の要素は忘れていない。別役実風「電信柱」のある交番のシーンが、数少ない息抜きで、巡査同士のかみ合わない会話が可笑しい。いつまでたっても男の捜索にはつながらないけど。巡査や同僚教師、黒子ならぬ「砂子」など、複数役にオクイシュージ、武谷公雄、ナイロンの吉増裕士と廣川三憲。妻役は声とシルエットで町田マリー。

照明(関口裕二)の変化が効果的で、色っぽいシーンをお洒落に見せる振付は、お馴染み小野寺修二。舞台上手の上のほうで音楽の上野洋子が、いろんな楽器と野太い声で生演奏するのが、ちょっとレトロで斬新でした。ケラ&緒川夫妻のユニット公演第2弾、攻めてます。

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