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春陽「海賊退治」「河村瑞賢」「長唄 勧進帳」「四谷怪談」

噺小屋in池袋 葉月の独り看板 夜の部 2021年8月

昼の部に続いて、夜の部は三回目の神田春陽さん。けっこう集まったシアターウエスト、昼にもまして前の方中央のいい席で3100円。定刻前から盛り上がってたっぷり3時間。

なんとオープニングアクトに、お馴染みカンカラ三味線の岡大介。40過ぎと思えない朗らかさがいい。酒場の窮地を嘆き、五輪やコロナ対策を皮肉りつつ、三波春夫「大東京音頭」、原点「スーダラ節」、自作の酒呑み歌などを伸び伸びと。本も出版とのこと、何よりです。
続いて前座は神田鯉花(りか)。松鯉さんのお弟子、ちょっと不思議ちゃんの雰囲気。おもむろに眼鏡をとって笹野名槍(めいそう)伝から「海賊退治」。興福寺発祥で山縣有朋も習得した宝蔵院流槍術の達人、若き笹野権三郎が船上で大立ち回りを繰り広げる。何が何やら。
いよいよ春陽さん登場。ワクチンはあっという間、などと愉快なマクラから、今日の四谷怪談はお岩さんが出てこない、前半は怖くないけど夏の話でと「河村瑞賢」。無一文で江戸に出て、車引の親方のところへ転がり込み、なんとお盆のお供え物を引き取って漬物などにして儲けちゃう。ゆったり上方言葉の大物感、文句言いつつ面倒をみる車引の人情、暑い夏の風情がいい。「法華以外は南無阿弥陀仏で」というくだりが偶然、昼の部とつながる面白さも。のちに材木商、廻船で成功した豪商で、大阪の治水工事・安治川(中之島の下流ですね)を指揮した人だそうです。

中入り後、幕が上がると杵屋浅吉。長髪でちょっとサーファー風、訥々とした口調ながら、明晰な解説を交えつつ長唄「勧進帳」ダイジェストを。歌舞伎舞台が目に浮かんで面白かった。佐門会家元七代目杵屋佐吉の長男、母方の祖父が木村功さんなんですねえ。なんてハイレベルなゲスト!
ラストに春陽さんが再登場。浅吉さんが入り口のテロ対策にひっかからなくて良かった、いつもの夏なら「キジバス」で怪談を口演する、お祓いに行って夫婦喧嘩を聞かされ…と笑わせ、歌舞伎の南北作「東海道四谷怪談」は当時の事件を複数取り入れていて、長屋の舞台は雑司ヶ谷、講談バージョンは元ネタのひとつ「四谷雑談集」に近い、と解説し、眼目の四谷怪談から発端の「於岩様誕生」へ。
田宮又左衛門の一人娘おつなは、病気のために醜く婿のなり手がいない。ある寒い日、なんと父が奉公人・伝助を「娘の部屋は暖かいぞ」とけしかけ、叔父のところへ身を寄せて所帯をもつ。なんだかコメディだな…と油断してたら、後半は凄く怖くなる。気のいい伝助が、トンデモ武士が発作的にひき起こした金貸し夫妻の殺しに巻き込まれ…と、お岩さん誕生につながる因果を語る。病気による差別とか、天井から…とか、実に陰惨で、春陽さん、凄みあり過ぎです。怪談はいつも、怖いのは幽霊なんかじゃなく人間なんだよね。ぶるぶるっ。
いやー、盛りだくさんでした!

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