リボルバー
リボルバー~誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?~ 2021年7月
ゴッホが自殺に使ったとされる銃が1980万円で落札された、というニュースを土台に、死の謎解き、そしてゴーギャン、弟テオとの愛憎を描く。原田マハが上演を前提に小説を書いて自ら戯曲化、行定勲が演出。テーマは刺激的なんだけどテンポがどうもイマイチで、休憩含め2時間半強を長く感じたかな。ジャニーズファンが詰めかけた感じのパルコ劇場、中ほど下手端で1万2000円。
物語は現代パリと1887年が交錯。現代の研究者・高遠冴(北乃きい)とオークションハウス社長(相島一之)、スタッフ(細田善彦)の元に、少女クロエ(東野絢香)がゴッホを撃ったという錆だらけの銃を持ち込む。銃は本物か、クロエの祖母とは何者なのか? 一方、19世紀末。ゴッホ(安田章大)は浮世絵に触発され、テオ(大鶴佐助)の支援で創作に打ち込むが、全く評価されない。理想の工房を求めたアルルでもゴーギャン(池内博之)との共同生活が2カ月で破綻、奇行に走る。果たしてその死は自殺か他殺か、事故か?
「ピサロ」に続いて大鶴が抑制を効かせたいい存在感。天才を愛しつつも、常識サイドにいる者の苦しみ。結局、兄を追うように33歳の若さで亡くなるんですね。池内も強烈な自我を小細工無しに表現。彼もパリ画壇からは逃亡しちゃうんだもんなあ。
安田は終始、繊細な感じ。後遺症をかかえて偉いです。北乃が健気で、相島がいいまとめ役。「コンフィダント・絆」のシュフネッケルから、もう14年とは。
芸術の「値段」とか美術史上の革新とか、説明が多いせいかセットは抽象的。療養先から送りつけられ、テオが衝撃を受ける傑作「星月夜」を、あえて台詞で語るシーンにゾクッとした。ずっと舞台中央にあって時空を結ぶ銃や、絵画風ブレヒト幕などは美術・堀尾幸男のアイデアとか。ゴーギャンがわざわざ種を取り寄せ、マルキーズ諸島に咲くひまわりの、どこか禍々しい感じ(人のよう)が印象的だ。
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