母と暮らせば
こまつ座第137回公演 母と暮らせば 2021年7月
井上ひさし原案、2015年の山田洋次映画をベースにした、畑澤聖悟の戯曲を栗山民也が演出。富田靖子のお母さん伸子が可愛そうで可愛そうで、泣けた。でもラストには、なけなしの勇気がわく。改修後の新宿東口・紀伊國屋ホール中ほどで6600円。休憩無しの2時間。
1948年(昭和23年)8月、長崎市郊外、助産婦の伸子が独り暮らす一軒家のワンセット。階段に、原爆で死んだ息子・浩二(松下洸平)がぼおっと現れる。素朴なちゃぶ台を挟んでの母子の思い出話は、コミカルでとても自然。絶品おにぎりのこと、やはり助産婦だった祖母への尊敬。
やがて残された恋人の縁談、医科大生だった浩二の最期、なぜ伸子が今、休業中なのか等々、原爆の傷跡の過酷さが語られていく。控えめなライティングが、息子が愛した海の町の夕焼けを思わせるうち、やがて心が穏やかになってくる展開がしみる。
息子の姿は幻かもしれないけど、塩水の「しょっぱ!」が、忘れてはならない大切なことを胸に残す。富田が実にいい年の取り方をしている。長身の松下も、優しい印象だ。2018年初演。
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