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ピサロ

Parco Produce 2021  ピサロ  2021年6月

2020年春のオープニング第1弾だったのに、10回しか上演できなかった「伝説の舞台」が再登場ときいて、足を運んだ。「あなたの目」「アマデウス」のピーター・シェーファーによる1964年の戯曲は、「理解を放棄すること」の残酷さを容赦なく描いて鮮烈。翻訳は伊丹十三なんですねえ。パルコ劇場の、なんとほぼ最前列、中央のいい席で1万3000円。休憩をはさみ3時間弱。

16世紀スペインの将軍ピサロ(渡辺謙)は、一攫千金に命をはる男たちを率いて遠くインカ帝国に乗り込み、丸腰の3000人を虐殺、財宝を略奪する。征服ののち、約束通り人質の王アタウワルバ(宮沢氷魚)を釈放するか?

スペインの指導者たちは、文字をもたないインカ文明をはなから見下し、キリスト教を強要する。きっと多くの同じような横暴が、歴史に埋もれていることだろう。しかしピサロの傍らには珍しいことに、異文明とコミュニケーションしようと努力する小姓マルティン(大鶴佐助)が存在した。ピサロは目の前の若き王が、普遍的な知性と威厳を持つことに気づいて、苦悩する。

英国ロイヤルバレエ出身のウィル・タケットの演出は、前半のクライマックスである虐殺シーンをダンスと映像で構築して、迫力がある。横幅の広いシンプルな階段のセットに、巨大な金色の太陽、そして王の光り輝く黄金の衣装が荘厳だ。美術・衣装はコリン・リッチモンド。

1985年に王を演じて山崎努のピサロと対峙した渡辺が、今回はピサロ役。持ち前の情けなさが、英雄でも極悪人でもない、ひとりの老いた成り上がり者を見事に造形。終盤の哀切が胸に迫る。一方の宮沢は長身と透明感に加えて、意外に声が太く存在感を発揮。「ボクの穴、彼の穴。」でも共演していた大鶴にひたむきさ、蛮行の目撃者としての説得力がある。
ほかに副官に「大地」の栗原英雄、騎兵隊長に文学座の浅野雅博、独善的な修道士に長谷川初範、語り手である老マルティンに外山誠二、インカの司祭に首藤康之と豪華布陣でしたあ。 

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