首切り王子と愚かな女
首切り王子と愚かな女 2021年6月
蓬莱竜太作・演出。「まほろば」のイメージが強いけど、今回は意外に野田秀樹ばりのファンタジー。命の意味を問うメッセージは現代的だ。広いステージだけに、もう少しパワーが欲しかったかな。パルコ劇場の中ほど下手寄りで1万2000円。休憩を挟み3時間弱。
先王の妻デン(若村麻由美)が統治する雪深い王国は、疫病や不作で政情不安なうえ、第一王子ナルは病床に伏している。孤島にうち捨てられていた世間知らずの第二王子トル(井上芳雄)が呼び戻され、母や重臣に命じられるまま残虐に市民を弾圧。しかし処刑場の崖で、死のうとしていた捨て鉢な庶民の娘ヴィリ(伊藤沙莉)を召使いにして…
木箱を自在に組み合わせて、王宮や孤島、草原での馬の疾走を表現(美術は松井るみ)。民衆の蜂起のスペクタクルなどサービス精神ぎっしりで、展開もスピーディーだ。三方にアクリル板の化粧スペースやハンガーラックを置いて俳優が控えるのは、ちょっと効果がわかりにくかったかな。運命を悟ったトルの絶望、それを乗り越えていくヴィリの旅立ちを、ぱあっと明るい場面転換で表すのは鮮やか。
井上はコメディセンスがなかなか。小柄でハスキーな伊藤に、もっと切なさが欲しかった気も。映画とかで活躍してる女優さんなんですねえ。意地悪王女に可愛い入山法子、その恋人で気の良い兵士ロキにコミカルな和田琢磨、ロキを想って犠牲となる先輩にお馴染み高橋努、ワルの大臣に石田佳央、姉の革命派近衛兵にきりっとした太田緑ロランス。