夏祭浪花鑑
渋谷・コクーン歌舞伎第十七弾「夏祭浪花鑑」 2021年5月
2008年に勘三郎・橋之助で観て、パトカー登場の疾走が鮮烈だった名作。次世代による継承が嬉しく、特に松也の柔軟さが光ってた。串田和美演出・美術は時節を踏まえ、ヤンキーたちのやぶれかぶれを残しつつ、冒頭とラストに舞台裏の厳粛なお祓いを見せる工夫。中村屋ファンの温かさが漂うシアターコクーン、1階中ほどやや下手寄りのいい席で。休憩なしの2時間強。
セットの出し入れでスピーディーに場面を展開。序幕の発端よりお鯛茶屋の場は、舞台番(笹野高史)がトントンと説明して、続く住吉鳥居前の場で、団七(勘九郎)と運命の出会いとなる一寸徳兵衛(松也)がいなせだ。団七女房のお梶(七之助)がいまや貫禄で、息子市松(長三郎)もかなり達者。
釣船三婦内の場では松也が徳兵衛女房・お辰に変身して大活躍。三婦も若返って片岡亀蔵に。長町裏の場は泥を避け、たくさんの本火の紙燭、燃え上がる面明かりを自在に使って、勘九郎と絶品・笹野の義平次が熱演する。一転、祭りの高揚に至る鮮やかは変わらない。
今回はむしろ地味な二幕目、九郎兵衛内の場の徳兵衛、団七、お梶の味わいが際立つ。侠客たちが、まあ短慮なりに精一杯、互いを思い合う。残暑の夕刻、斜めの照明の気だるい陰影が、不安と哀愁を醸して効果的だ。照明は斎藤茂男。続く屋根の場からは、和太鼓も駆使した怒涛の逃走劇で、勘九郎が身体能力を発揮。他に大迷惑の磯之丞の虎之介に存在感があり、琴浦の鶴松と可愛いコンビ。
開幕前から江戸気分とか、舞台と客席が一体になるコクーンらしさは封印されたけど、面白かったです!
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