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歌舞伎「熊谷陣屋」「直侍」

三月大歌舞伎 第二部  2021年3月

二月に続いてベテランの至芸を堪能。休憩を挟んで2演目3時間で、久々にたっぷり感も味わう。感染対策中の歌舞伎座、前の方中央のいい席で1万5000円。

まず「一谷嫩軍記 熊谷陣屋」。昨夏の再会場から90分は1幕最長だそうです。2012年団十郎の名演のほか吉右衛門、芝翫、幸四郎と観てきて、今回は歌舞伎座で16年ぶりとなる仁左衛門。独特の品があって細やかで、殺伐とした戦場の武将というより、義経(錦之助が堂々)の大局を踏まえた「理」を慕い、「正解」を選ぶ智将の印象。だからこそ犠牲にした「情」の痛手が大きく、深い虚しさから栄光を捨てるということか。
相模(孝太郎)に首を直接手渡すシーンに、美しい桜たる息子に対する夫婦の思いが、また去り際、義経から首を見せて声をかけられ恐れ入るシーンに、虚しさを共有する主従の思いが垣間見える。花道の「十六年は一昔」のあと、幕がひかれて三味線が登場。遠い戦場の音に一瞬放心、身も世もなく泣き崩れて、トボトボと去っていく。哀しいなあ。
孝太郎は声が太く、役に合っている。衣装は熊谷、相模とも金糸が多くきらびやか、扇も金と赤が鮮やかで、一つひとつの見得がまさに錦絵だ。藤の方に門之助、弥陀六に安定の歌六、堤軍次に坂東亀蔵。昨年末の南座、コロナで仁左衛門さんらを代打ちした面々でもあります。

休憩の後はがらっと世話に転じて「雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)直侍」。こちらは2017年以来2度目に観る菊五郎。初役から36年だそうで、隙なしだ。下駄にくっつく雪に凍える風情がある。蕎麦の注文とかの端切れの良さ、はらりと傘を開く格好良さとか、火鉢をまたいじゃう愛嬌とか、小悪党の粋がいちいち嬉しい。飄々とした按摩の東蔵もますます絶品だなあ。暗闇の丑松は團蔵。
後半、大口屋寮のシーンでは余所事浄瑠璃の清元「忍遭春雪解(しのびあうはるのゆきどけ)」にのり、三千歳(貫禄の時蔵)とのやりとりに、さらさらと艶がある。満足。

幸四郎が鬼平映画に主演の発表があり、ちょうど第三部で吉右衛門と共演中なんて話題もある公演でした。

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