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藪原検校

PARCO劇場オープニング・シリーズ「藪原検校」 2021年3月

井上ひさしの初期問題作(1973年初演)を、1982年生まれの杉原邦生が切れ味鋭く演出。乾いた渋谷の路地裏から、踏みつけられる者の怒り、切なさが鮮やかに立ち上がる秀作だ。休憩を挟んで3時間強が全くだれない。ジャニーズと猿之助ファンが目立つPARCO劇場、中央前の方の絶好の席で1万3000円。

江戸中期の塩釜に生まれた盲人・杉の市(市川猿之助)は、持ち前の語り芸や借金取り立ての才覚に加え、極悪非道な色仕掛けと殺人、カネの力で出世の階段を駆け上るものの、得意の絶頂で悪事が露見し、無残に処刑される。
2012年に栗山民也&野村萬斎で観たときは、陰惨さが息苦しかった記憶があるけど、今回はヒップホップ落書の現代風セット(美術は「二度目の夏」などの田中敏恵)がお洒落。張り巡らせたポリスラインが観る者に危うさ、不自由さを強いて巧妙だ。音楽の益田トッシュ(クドカンと仕事してる人なんですね)が舞台上手でロックを演奏し、疾走感、ときに高揚感さえ醸して心地いい。

猿之助が圧巻の歌舞伎パワーと愛嬌で、舞台を牽引する。さすがだなあ。早物語などの語りはもちろん、所作がいちいち決まるし、誤って手にかけてしまった母への思慕が鮮烈だ。「ホームグラウンドは歌舞伎座」と軽口もまじえつつ、キンキラ紫素絹&白袴が似合います(衣装は西原梨恵)。18世勘三郎や古田新太も演じた役なんですねえ。
対する三宅健は、前半の複数役では不安定に見えたけど、大詰め、盲人学者で聖人君子然とした塙保己市役に存在感があった。杉の市への共感、そして松平定信(みのすけ)との対論がクリアで、いい場面。杉の市の刑こそが、世間の側に残酷さを突きつけるという逆説。差別される側の暗い情念と「祭り」の圧力の恐ろしさは決して古びていない。

運命の女・お市の松雪泰子はエログロも上品で、猿之助に対して割と控えめ。繰り返し殺されちゃうのは、実は母の幻影なのかな。佐久間検校などに高橋洋(「クレシダ」など)、刀研ぎ師などに佐藤誓(「キネマと恋人」など)、「子守唄」が悲しい母などに宮地雅子と安定。語り手の川平慈英は「江戸見物」のリズム感など、なかなか達者でした。
ホワイエでひょろっと茶髪の杉原さんのほか、なんと三谷幸喜さん、ケラさん&緒川たまきさんと遭遇。注目されてる上演なんだなあ。隼人さんも来ていたらしいです。

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