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歌舞伎「於染久松色読販」「神田祭」

二月大歌舞伎  2021年2月

3部制の第三部が17世勘三郎33回忌追善だったけど、今回は第二部へ。40年来の黄金コンビ「ニザタマ」の姿の良さ、粋を堪能する。花道で頬を寄せ合う楽しげな雰囲気は、当世随一かなあ。2席ずつの間に1席空きぐらいの歌舞伎座、前の方やや上手寄りで1万5000円。休憩を挟んで2時間弱と、コンパクトながら大満足だ。

「於染久松色読販売(うきなのよみうり)」は質店・油屋の娘おそめと丁稚・久松の心中もので、早替りの「お染の七役」で知られるけど、この日は「土手のお六・鬼門の喜兵衛」と銘打ち、脇筋の悪党夫婦に焦点をあてる。陰惨だけど笑いもたっぷりで、文化文政時代、爛熟した庶民文化を描いた四世鶴屋南北の面目躍如であり、1975年「桜姫」であたりをとったニザタマの悪の美が際立つ。
序幕・柳島妙見の場は発端となる、押上・放性寺の門前を抜粋で。実直な嫁菜売・久作(中村吉之丞、吉右衛門の部屋子→先代吉之丞の芸養子)が油屋番頭・善六(片岡千次郎、上方歌舞伎塾出身)ともめて額に傷を負う。通りかかった薬種屋の旦那・清兵衛(河原崎権十郎)が止めに入り、久作に袷と膏薬代を渡す。脇の油屋太郎七・坂東彦三郎が堂々と主人らしく、宝刀の折紙を盗んだワルの千次郎と、言いくるめられて河豚を食べに行く丁稚九太の上村吉太朗(我當の部屋子)の三枚目ぶりが達者だ。
続く小梅莨屋の場が出色。セットは粗末で暗いお六の家。複雑な背景はすっ飛ばして、「馬の尻尾」姿の悪婆・お六の坂東玉三郎の退廃美、そして死骸に細工しちゃう喜兵衛・片岡仁左衛門の凄みと色気に目を奪われる。浮世絵そのものです。ストーリーも奇抜で、河豚にあたった男の早桶、久作の袷、さらに髪結(芝翫の次男・中村福之助がはきはき)の道具…を「あいよ、置いときな」と次々預かり、これが悪だくみの道具立てになっていく。
第二幕は照明が明るくなって、瓦町油屋の場。お六と喜兵衛が駕籠で死骸を持ち込み、久作は弟、昨日の傷が元で亡くなった、百両よこせと強請る。伝法でどこか投げやりな啖呵が痛快だ。居合わせた清兵衛が怪しみ、なんと死骸に灸をすえ始める。丁稚の長太(ニコニコ寺嶋眞秀)をまじえて、しのぶさんの躾がいい、手指消毒で笑わせる。そこへ死んだはずの久作が現れ、死骸も息を吹き返して九太と判明。夫婦はきまり悪げに退散、なんと駕籠をかついで花道を引っ込む。とんでもない悪党なのに、愛嬌たっぷりでバカバカしいのがいい。

休憩を挟んで「神田祭」は清元の舞踊で、江戸の華・鳶頭の遊びを芸者がなじる。他愛ない夫婦喧嘩と仲直りがチャーミング。
山王祭と並んで、祭礼の行列が江戸城内に入った天下祭だそうで、セットはスカッと広々した江戸の町並みに赤い提灯が下がり、下手後方の高台にお社とのぼりが見える。鳶頭の仁左衛門はほろ酔い加減、追っかけ五枚銀杏首抜きに、獅子文様の袴、片肌脱ぎの真っ赤な襦袢、牡丹の扇子と派手派手です。対する芸者の玉三郎は、黒紋付に波の裾模様、縁だけ赤い天紅の扇子が艷やか。
華やかな手踊り、クドキ、そして江戸の流行歌という投げ節、木遣り。威勢のいい若い衆をあしらい、二人仲良く町へ繰り出していく。浮世の憂さを忘れました!
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