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「俊寛」「毛谷村」「文売り」「三社祭」

11月歌舞伎公演 2020年11月

吉さま、ニザさまの2大巨頭が並ぶ、国立劇場大劇場の歌舞伎へ。席は引き続き市松だけど、レストランなどはかなり平常営業になっていた。第一部はお馴染み近松作「平家女護島 俊寛」で、円熟・吉右衛門の哲学的な演技を堪能する。中央後ろ寄りで7000円。30分の休憩を挟み2時間半。

序幕は国立劇場が1967年に復活した「六波羅清盛館の場」で、俊寛の悲劇の背景がよくわかる。吉右衛門が清盛で登場、俊寛の妻・東屋(あずまや、菊之助)に一目惚れして側室になるよう命じる。憎々しいけど大物感はばっちり。東屋は激しく拒否、教経(家六)のアドバイスで自害しちゃう。従者の有王丸(きびきび歌昇)が乱入して、教経の従者・菊王丸(声のいい種之助)とやり合う爽やかなくだりがあり、教経が止めに入って有王丸に東屋の首を託す。非情な展開なんだけどテンポがよく、「常盤御前と一緒にするな」と言い放つ菊之助に、威厳があっていい。
休憩後は眼目の二幕目「鬼界ヶ島の場」。割にさらさらと運んで、必見は幕切れ、俊寛(吉右衛門)が遠ざかる赦免の船を、ひとり絶壁の先端で見送るシーンだ。亡き勘三郎さんで観たのが2010年。去っていく船に必死で叫ぶ勘三郎に比べ、吉右衛門は虚無の表情。妻の死を知らされ、圧倒的な孤独を自ら選びとった後の姿は、静謐で、だからこそ絶望と諦念が胸に迫って衝撃的だった。瀬尾(又五郎)に斬りかかる背景に、若い夫婦のための自己犠牲というより、妻の死があるというところで、「清盛館」の上演が生きる。
プログラムの解説を読むと、戦争の苦難をへた1946年に初代吉右衛門が演じ、幕切れの演出で、若く知的な歌舞伎ファンを開拓した演目であり、今また当代の工夫をリアルに観られるのは有り難い。瀬尾をやり込める丹左衛門の、きっぱりと上品な菊之助がまたいい。仲間の成経は錦之助、康頼は吉之丞と安定。千鳥の雀右衛門は可愛いけど、ころころ過ぎか。竹本葵太夫の浄瑠璃がいつになく聴きやすかったな。

1週間後に第二部へ。素朴で明るい「彦山権現誓助剣~毛谷村(けやむら)」だ。2009年に吉右衛門の歌舞伎で、また2012年に玉男&咲太夫の文楽で観た楽しい演目。気が優しくて力持ち、剣術の達人なのに騙されやすく、人間味あふれる主人公・六助で、先月の歌舞伎座に続いて仁左衛門の絶妙な軽み、可笑しみを楽しむ。
「豊前国彦山杉坂墓所の場」がつき、六助が微塵弾正(彌十郎)の母孝行(のフリ)にほだされて八百長を約束、また孤児・弥三松(梅枝の長男・小川大晴が超立派に初お目見得!実は六助の師匠の孫)を預かる経緯を見せる。
続けて眼目の「毛屋村六助住家の場」。弾正に額を割られてもニコニコしている気のいい六助に、笑いがもれる。旅の老婆お幸(悠然と東蔵、元気でなにより。実は師匠の後室)、虚無僧に化けた怪力・お園(孝太郎、実は師匠の娘)が現れ、六助が太鼓で弥三松をあやしながら、一方で斬りかかるお園に必死で経緯を説明したり、お園が一転、女らしい恥じらいをみせつつ臼を振り回しちゃったり、面白いシーンの連続だ。優しく牧歌的で、上方言葉がぴったり。孝太郎は女武道が合ってるなあ。
杣人(そまびと=きこり)斧右衛門(ほのぼの彦三郎)が母の死を嘆くのを聞くあたり、舞台中央に陣取る仁左衛門の姿の美しさに感心! ようやく弾正に騙されたこと、また弾正こそ憎い師匠の敵だと知って、ついに怒り爆発、庭石を踏み込んじゃう。メルヘンです。ラスト、お園が景季の箙(えびら)の梅にちなんで六助に梅の枝を贈ると、お幸が張り合って椿の枝を贈るのも微笑ましかった。

休憩を挟んでコンパクトに清元の舞踊2題。古風で艶やかな「文売り」は、梅に懸想文(恋文)を結んだ縁起物を売る女(梅枝)が、逢坂山の関での身の上話に、郭の痴話喧嘩を語りきかせる。梅枝は色気はまだイマイチな感じだけど、姿も声も端正で舞台に映える。詞章は近松「嫗山姥(こもちやまうば)」の遊女・八重桐にちなんでいるそうです。
続けて映像だけ観たことがある、中村屋ゆかりの軽妙な「三社祭」。浅草の観音信仰の始まりにちなんだ漁師ふたり(ころころ21歳の鷹之資、爽やか20歳の千之助)に、頭上の黒雲から善玉・悪玉がとりつく。面をつけての難しそうな時代物風「悪尽くし」、新内がかり、曲芸風「玉尽くし」などをハツラツと。若いおふたり、これからが楽しみです!
観劇のあと、第二部は孝太郎コロナ感染で休演になりました…

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