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迷子の時間

迷子の時間ー語る室2020ー  2020年11月

PARCO劇場オープニングシリーズで前川知大作・演出の「語る室」の再演。愛する人を失うのは苦しいけれど、「思い」は必ずどこかに存在しているという「真実」が、切なくもしみじみと温かい。2015年に池袋で初演を観たものの、新鮮な気持ちで鑑賞。一列目以外、ジャニーズファンでほぼ満席のPARCO劇場、下手寄り前方のいい席で1万2000円。休憩なしの2時間。

5年前の秋分の日、山道で幼稚園送迎バスから、運転手と3歳児が忽然と失踪した。子供を思い続ける母・美和子(貫地谷しほり)、その弟で、事件の手掛かりを失い、後悔を抱える交番警官・譲(亀梨和也)、運転手に対する中傷に耐えてきた兄・宗雄(忍成修吾)は、苦悶と諍いを乗り越えて、今は一緒にバーベキューをする仲だ。そこへ売れない霊媒師・佐久間(古屋隆太)、その連れで盗癖のある謎の青年ガルシア(松岡広大)、父の悲報をきき何故かヒッチハイクで実家へ向かう大輔(浅利陽介)、その妹で遺品の免許証から父の過去を知ろうとする真知子(生越千晴)が集まってくる…

前半は美和子ら3人の辛い5年間を物語り、後半では超現実な失踪の謎が解き明かされていく。未来からやってきたとか、過去へ迷い込んだとかを知ってから、シーンの繰り返しがあって、全く違って見えるのが面白い。終盤、7人がセットを冒頭のかたちに戻しながら、無言で楽しそうに戯れるシーンが、穏やかな日常の有り難さを感じさせて印象的(初演には無かったかも)。
時空が交錯する複雑な戯曲だけど、交番のワンセットを回転させ、背後の草むらやテーブルなどを駆使してテンポよくみせていく。精緻だなあ。鍵になる「ハロ現象」の霧やライティングが美しい。美術は乗峯雅寛(「リチャード二世」など)、照明は原田保(「アジアの女」など)。

亀梨が気のいい、ごく普通の青年を好演し、達者な出演陣全員がトーンを合わせるように、抑えた演技で透明感を醸す。浅利も怪演を封印して、戸籍を持たなかった父と自らの養子の出自に対する屈託を繊細に表現。「恐るべき子供たち」で観た松岡が、キレのいい動きでやんちゃぶりを発揮していいアクセントだ。「まほろば」の生越もピュアな造形が可愛い。狂言回しの古屋は、ひとり色鮮やかなガウン姿で、いちばん色気があったかな。
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