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正蔵「鮑のし」「紋三郎稲荷」「藁人形」

噺小屋in池袋 霜月の独り看板《夜の部》林家正蔵「藁人形」正蔵ダークサイド  2020年11月

昨年5月「双蝶々」以来の、悪い奴を語る「ダークサイド」第2弾。ディスタンスが贅沢な東京芸術劇場シアターウエスト、最前列上手寄りで3900円。中入りを挟んで2時間弱。
幕開きは3番弟子の林家はな平が「最近はうっかりマスクのまま上がっちゃう」などと言いつつ、以前聴いたことがある「鮑のし」。女房の賢さは割とあっさりめで、わらびのし、松葉のしなど薀蓄が滑らかだ。
続いて正蔵が登場。「根岸の自宅は芸人の家なので、祖父の代からお稲荷さんがあって、お祭りにはお揚げを…」と風情ある導入から、「同じ化かすでも、狸に比べ狐は怖そう、北海道で遭遇したキタキツネは尾が美しかったけど、目は悪そうだった、伯山みたい」と笑わせて「紋三郎稲荷」。初めて聴く噺だ。
笠間稲荷の門前・常陸国笠間の侍が、狐の胴服(毛皮のコート)で江戸に向かう道中、しっぽをみて駕籠かきが「お使い姫」だと騒ぎ出す。松戸の本陣に泊まると主人がお稲荷さんの熱心な信者で、調子に乗った侍はナマズ鍋や鯉こくを所望、おひねりまでせしめちゃう。王子、伏見と各地の有名稲荷に言及する楽しさ、キツネが化かすのではなく、人間がキツネに化けて悪ノリするという逆転が楽しい。侍がすたこら逃げ出すのを見て、庭のお稲荷さんの狐が「人間のほうが騙すのが上手い」という落ちが、眼目の「藁人形」のテーマにつながる仕掛けだ。

というわけで、中入り後はマクラもそこそこに、たっぷりと「藁人形」。八代目が得意とした噺だそうです。
江戸時代には糠が重宝された、と説明して本編へ。神田の糠問屋の小町・お熊は、駆け落ちのすえ千住で人気の花魁になる。老いた願人坊主の西念は、お熊に「死んだ父親に似ている。身請けされて絵草紙屋をやるので、西念を引き取りたい」と言われてその気に。「いい居ぬきの物件をみつけたのに、手付がない」と嘆かれて、隠し持った20両を用立てちゃう。ところがお熊は一転、「そんな約束していない。西念を騙せるか仲間と賭けたのだ」と突き放す。長屋にこもってしまった西念を、甥が訪ねてきて…
甥に「鍋の中を絶対に見るな」と何度も念を押す西念。落ちぶれたとはいえ、かつて出入りで人を殺めたせいで、鳶を辞めたとあって、表情に凄みがあって怖い。金だけじゃなく、人恋しさ、温かい気持ちを裏切られた絶望と孤独。騙す側より、騙された側の恨みの深さにぞっとする。一方でそこは落語、繰り返すうちに笑いも漏れるところが、黒塚とは違う。なんと鍋の中では、油で藁人形を煮ていたのだけど、その呪いを甥が解きほぐすラスト、救いがあってじんとします。糠屋だけに釘じゃ効かないと、落ちはさらり。いい噺になっていて、ひょっとして正蔵さんの代表作かも。

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