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All My Sons

serial number05「All My Sons」  2020年10月

アーサー・ミラーによる1947年初演作を、映画「新聞記者」の詩森(しもり)ろばが訳・演出。嘘に嘘を重ねて崩壊していく家族を、庭先のワンセット(美術は杉山至+鴉屋)、一夜の出来事で濃密に描く名作だ。神野三鈴が振幅大きく演じて圧巻。シアタートラム前の方上手寄りで6500円。10分の休憩を挟み2時間半。企画・製作風琴工房。

戦争特需で潤ったジョー(大谷亮介)は、復員した長男クリス(田島亮)に機械部品工場を継がせるのを楽しみにしているが、妻ケイト(神野三鈴)は次男ラリーの戦死を受け入れられず錯乱気味。そこへ次男の恋人アン(瀬戸さおり)が来訪、クリスとの結婚を報告しようとする。
と、ここまでは正直、会話の理屈っぽい言い回しにちょっと閉口したけれど、後半、アンの兄ジョージ(金井勇太)が突然現れ、戦時中に工場が起こした欠陥隠蔽事件の真相を追及しだすと、それぞれの激しい動揺にぐいぐい引き込まれる。

戦後まもなくのタイミングで、容赦なく戦争の傷に切り込んだ、戯曲の強靭さにまず驚く。どうやら一般には、家父長的ジョーの欺瞞と、若者らしいクリスの倫理観との相克に、拝金主義批判を読み取るらしい。しかし大谷の造形からは、少し別種の切実な印象を受けた。家族のためという半径5メートルの正義、これくらいならなんとかなるという現代ビジネスマンにもありそうな小さな甘えが、あれよあれよと思ってもみない大惨事を招く。そう考えると、みんな我が子というタイトルは、身内の論理を超えて「社会」をイメージすることの困難を思わせて普遍的だ。
サスペンス要素もあって、舞台に登場しない人物ふたりがカギを握る展開がスリリング。ひとりはアンとジョージの父で、元は工場の共同経営者だったスティーブ。欠陥部品が戦闘機墜落を引き起こした事件で有罪となり、服役中の彼が、いったいジョージにどんな真相を語ったのか。そして戦地で飛び立ち、「行方不明」になったままの次男ラリー。果たしてその生死は… 繰り返しセットをよぎる爆音と機影が、一見平凡な家族の世界に、重くのしかかる。

神野の存在感が突出。田舎っぽくて、人目を気にしていて、積み上げてきた幸せを守ることに必死。ジョージとの再会シーンで「隣のおばさん」の愛情をあふれさせ、緊張感を一気に過去の親密さへと転じるさまには、目を奪われた。瀬戸のみずみずしさが発見。ある決意を胸に秘めた難しい役どころだけど、キレイな立ち姿や細い首に、意思の強さがにじむ。瀬戸康史の妹なんですねえ。
大谷の巧さはもちろん、金井の切なさもいい。なんとドラマ「MIU404」のオタクのスパイダー班班長。この人はノシてきそうだなあ。田島は不器用ながら健闘。2013年の休演事件後、4年のブランクをへて復帰、このユニットでは俳優への出演交渉も担当しているらしい。がんばってほしいです。隣の医師に杉木隆幸、その意地悪な妻に熊坂理恵子、気のいい隣人夫妻に酒巻誉洋と浦佐アリサ。

カーテンコールで神野が挨拶して、「私たちは舞台にいます」との言葉にジンとする。困難なときに、モノを作り続ける人の苦しみと喜び。ロビーには渡辺えりさんの姿も。

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