« 2020年9月 | トップページ | 2020年11月 »

大地

大地 Social Distancing Version  2020年10月

番外編で、新生PARCOに三谷幸喜が書き下ろし・演出。コロナ禍の3カ月ぶり再開第1弾で話題だった舞台だ。7月の上演で、配信チケット(3000円)を購入するも悔しいことに通信が不安定で楽しめず、WOWOWの中継で。3時間。

銅鑼の音でスタート、とある独裁政権の収容所の、斜めに並んだ独房のワンセットだ(美術は堀尾幸男)。生命を脅かされる極限状況で、演じることを禁じられた俳優たちが、それぞれ渾身の寸劇を見せる。そこに俳優さえいればイマジネーションを喚起できる。三谷ならではの笑いと「俳優愛」が冴えまくる。
なんといってもチャペック・大泉洋の切なさが突出。スターたちのなかで一人だけ脇役という激しい劣等感、それでも演劇を愛するピュアな思い、生活力があるのは自分だけ、何としても生き残ってみせるという裏方の気概。ラストで大泉=観客の不在にスポットをあてて、泣かせる巧さ。2018年末の執筆というから巡り合わせにせよ、いや、だからこそ、現実にあらゆるエンタメが制約された状況で、三谷喜劇の普遍性が際立つ。

テーマが胸に響くのは、中盤、爆笑の演技合戦が素晴らしいからこそ。なかでも浅野和之のマイムは圧巻だ。ありもしないご馳走を食べて盛り上がり、突風をついて進む。いやいや、できないことがない人だなあ。
座長・辻萬長の泣かせるドサ芝居、スカシまくる銀幕の2枚目・山本耕史も伸び伸び。大道芸人・藤井隆、理屈っぽい相島一之が安定し、女形の竜星涼、弾ける紅一点まりゑ、舞台道楽の指導員・栗原英雄、冷酷な役人・小澤雄太も健闘。
回想を語る舞台回しは、若手の濱田龍臣が明朗に。過酷な結末から幻想の一座出立まで、余韻が深い。

真夏の夜の夢

真夏の夜の夢  2020年10月

シェイクスピアのファンタジー喜劇を野田秀樹が大胆に潤色し、1992年に初演した戯曲。演出は2017年「リチャード三世」が衝撃だった、ルーマニア「暗黒演劇」のシルヴィウ・プルカレーテだ。プルカレーテと、美術・照明・衣装のドラゴッシュ・ブハジャールは9月に来日が実現したそうで、関係者の執念にまず脱帽。舞台はスタイリッシュだけど、身構えてたほど強烈ではなかったかな。東京劇場プレイハウスの後方中央で8500円。休憩なしの2時間。

舞台は欲望が解放される夏の森。原作は若い男女と妖精の王・女王という男女3組の恋が、魔法によって掛け違っていくお馴染みのドタバタだ。ケルトっぽいトリックスター・妖精パックが活躍する。これを野田版では富士の裾野、料亭の跡取り娘の駆け落ちに置き換え、ポップと言葉遊び(「年の精」=としのせいとか)をてんこ盛りに。なにより悪魔メフィストを登場させちゃってパックとすり替えちゃう離れ業だ。
今回は巨大パネルの移動で人物をスピーディーに入れ替え、映像も大胆に使用。メフィストを巨大にしたりして面白い。ひらひら衣装の、愚かで可愛い人間たち。ラスト、全員が横一列になってのカーテンコールは、観客とともに何とか舞台を成立させた感慨を印象づける。まあ、ニナガワだったらこれを幕開きにやるかな、という気もしちゃうけど。

メフィストの今井朋彦が、明晰なセリフ回しと気取った立ち姿で突出。こういう人をくった役どころは、余人をもって代えがたいです。その分、パックの手塚とおるは電子レンジに閉じ込められちゃてて、持ち前の曲者ぶりが抑えめに。
手足もあらわに森を跳ね回る鈴木杏(そぼろ)が、溌剌としてチャーミング。7月の一人芝居が圧巻だっただけに、期待通りというところ。女王タイテーニアの加藤諒が、予想外にアニメのキャラっぽい存在感を発揮してた。カーテンコールでも飛び抜けて小柄で、ベテラン女優のように振る舞ってましたね。
ときたまごの爽やか北乃きい、板前デミの太っちょながら切れのいい加治将樹、板前ライのすらりとした矢崎広が、それぞれ健闘してた。ほかに王オーベロンの壤晴彦、阿南健治(妖精と2役)、朝倉伸二、長谷川朝晴、山中崇、河内大和…と安定の布陣。もっとも怪優・茂手木桜子以外は、白塗りで俳優と役が遠目にはわかりにくいのが難だったかな。
20201031-008

 

 

私はだれでしょう

こまつ座第134回公演 私はだれでしょう  2020年10月

没後10年の井上ひさしによる2007年初演作を、栗山民也演出で。言論のコントロールという今まさに切実なテーマを描き、一人ひとりに「私はだれであるべきか」を厳しく問う。もちろん、お馴染みの朗らかな歌、滑稽みもたっぷりなんだけど。ピアノは朴勝哲。常連が多そうな紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAの、後ろの方で8800円。休憩を挟んで3時間。

ときは昭和21年7月から翌11月までのほぼ1年半。内幸町にあったNHK、ラジオ番組「尋ね人」制作班のワンセット(美術は石井強司)だ。シーンを追うごとに増えていく、戦中戦後に行方不明になった親しい人々を探す投書の山が、切実な叫びに満ちて、これこそが舞台の主役と思わせる。
元アナウンサー川北京子(朝海ひかる)ら3人の女性が、占領軍CIE(民間情報教育局)の事前検閲を受けつつも、使命感をもって放送に取り組んでいるところへ、用語担当の佐久間(大鷹明良)、CIE担当者で日系2世の馬場(吉田栄作)、組合リーダー・高梨(尾上寛之)が賑やかにからむ。記憶をなくした青年・山田太郎?(平埜生成)が現れて、「私はだれでしょう」コーナーも開始。やがて京子は、あるCIEのタブーに挑戦する決断をして…
平埜がいつの間にか、なかなかの存在感を身に着けていて、びっくり。飛んだり跳ねたり、見事なタップも披露。大鷹がさすがにいい味。2017年公演と同じメンバーなんですね。

20201018-002 20201018-005

リチャード二世

令和2年度文化庁芸術祭主催公演 リチャード二世 2020年10月

2009年から鵜山仁演出で上演してきた、シェイクスピア史劇「ヘンリアド」シリーズの最終作。私はシェイクスピアと言えばさいたまだったので、直近の「ヘンリー五世」からだけど、陰影の濃い重厚な表現と、対照的にあいも変わらず諍いを繰り返す人間の愚かさがずっしり。新国立劇場中劇場の後ろの方で8800円。休憩を挟んで3時間半と、長尺・地味なセリフ劇なのに、緊張感が途切れません。小田島雄志訳。

14世紀末のプランタジネット朝イングランド。リチャード二世(お馴染み岡本健一)は、百年戦争の宿敵フランスから王妃イザベラ(お馴染み中嶋朋子)を迎え、側近を重用して我が身の安定を図る。反発する諸侯のひとり、従兄弟のヘンリー・ボリングブルック(ヘンリー四世=ハル王子のお父さんですね、浦井健治)を国外追放し、失政のせいで財政難のなか、アイルランド遠征の費用を捻出しようと彼の財産まで没収しちゃう。怒り心頭のボリングブルックは遠征の留守に、ノーサンバランド伯(円の立川三貴)&ホットスパー(ジャニーズJr.の原嘉孝)親子らと挙兵し、庶民人気の後押しもあってリチャード二世を投獄、王位を奪う(ランカスター朝)。リチャード二世は幽閉先で、失意のうちに暗殺される。

荒野に一枚板のシンプルな舞台。自在に情景を作り出していくラインティングが、なんとも鮮やかだ。人物の立ち位置が諸侯の対立構造を明示。ホリゾントから人物が湧くように登場し、また板の周囲で成り行きを見つめる庶民が、冷徹とポピュリズムを印象づける。美術は乗峯雅寛、照明は服部基。

セリフがよく響く高水準の俳優陣を、岡本が確かな存在感で引っ張る。クセの強い声、色鮮やかな宝石で着飾っていても、どこか子供じみた振る舞いに、お坊ちゃま王の哀しさ、それを十分自覚している屈折をまざまざと。クーデター諸侯と対峙したときの、側近たちと広い舞台の下手隅っこに、せせこましくかたまっちゃって、要求されてもないのにいきなり退位を宣言しちゃう卑屈さが凄い! なんだか恰幅のいい浦井は受けの演技を平明に。
対立する二人の叔父で、中立を選ぶヨーク公の横田栄司は、意外に引いてる?と思いきや、後半で暴走する息子オーマール公(文学座、「タージマハルの衛兵」の亀田佳明)を救おうと、迫力の夫人(「女中たち」の那須佐代子)とともに奮闘。期待通りたっぷり笑わせて、長丁場にメリハリを与える。笑いといえば、冒頭で騎士たちが手袋を叩きつけ合うしつこさも可笑しい。
原が目ヂカラで予想外の曲者ぶりだ。圧倒的声量の立川はじめ、ウエストミンスター修道院長の勝部演之(円)、ボリングブルック派の浅野雅博、石橋徹郎らがさすがの安定感。

終盤で戦いが終わっても、私たち観客は、これが薔薇戦争につながっていくと知っている。シェイクスピア劇の見事な無常感と、このカンパニーだから表せる時の流れが圧巻。あしかけ12年で島次郎さん、中嶋しゅうさんが鬼籍に入られたシリーズの歩みも重なり、感慨深かった。

20201017-002 20201017-001 20201017-006

梶原平三誉石切

十月大歌舞伎 第三部  2020年10月

先月の吉右衛門さんに続き、歌舞伎座は仁左衛門さん復活の第三部へ。前の方中央のいい席で8000円。一幕1時間ちょっと。10分ほど縮めているそうです。
梶原景時といえば、義経を讒言して死に追いやった敵役、が定番の梶原が、この「石切梶原」では情理兼備の立派な武士に描かれる本作。新開場の2013年に観たときは、吉右衛門さんが威風堂々だったけど、今回は16年ぶりというタイトロール仁左衛門さんの舞台への情熱、独特の色気と茶目っ気があふれて、理屈抜きにに楽しかった。

セットはうららかな春の鶴ケ岡八幡社前。梶原、大庭(彌十郎)、俣野(男女蔵)らが呑んでいるところへ、青貝師(螺鈿工、実は頼朝臣下)の六郎太夫(歌六)と娘(孝太郎)が刀を売り込みに来る。梶原が鑑定を引き受け、名刀と称賛したのに、俣野が疑って試し切りを言い出す(「目利き」)。囚人のコミカルな「酒尽くし」の後、六郎太夫が犠牲になろうとする。梶原はわざと失敗して六郎太夫を助け(「二つ胴」)、あざ笑う大庭らが去ると、今は平氏配下だが実は源氏の味方で、石橋山では頼朝を助けたと明かす。見事に手水鉢を一刀両断してみせ、名刀を買い上げると告げる(「石切り」)。
仁左衛門さんは後世悪名を受ける覚悟を胸に、竹本にのったセリフが美しくて感嘆。70代半ばにして、半年に及ぶ休演は辛かったろうに、「勧進帳」全役の朗読などで鍛えていたというから、サスガだ。そして大詰め、手水鉢を切るシーンは15代目羽左衛門型で、派手に前へ飛び出す。明朗。三味線のリズムに愛嬌があふれて、スカッとします。
それに比べると、歌六は巧いんだけど、ちょっと声が衰えたかな。赤っ面の男女蔵が、キビキビといい憎まれ役。頼朝の衣笠城立てこもりを知らせに来るだけの奴に隼人。

席は引き続きディスタンスだけど、隣のお着物の女性一人客が、年季の入った松島屋ファンなのか、大向うのタイミングですかさず拍手していて、あー、歌舞伎座っていいなあ、と思いました。1幕だと物足りないのは致し方ない。
20201011-008 20201011-012 20201011-027

 

All My Sons

serial number05「All My Sons」  2020年10月

アーサー・ミラーによる1947年初演作を、映画「新聞記者」の詩森(しもり)ろばが訳・演出。嘘に嘘を重ねて崩壊していく家族を、庭先のワンセット(美術は杉山至+鴉屋)、一夜の出来事で濃密に描く名作だ。神野三鈴が振幅大きく演じて圧巻。シアタートラム前の方上手寄りで6500円。10分の休憩を挟み2時間半。企画・製作風琴工房。

戦争特需で潤ったジョー(大谷亮介)は、復員した長男クリス(田島亮)に機械部品工場を継がせるのを楽しみにしているが、妻ケイト(神野三鈴)は次男ラリーの戦死を受け入れられず錯乱気味。そこへ次男の恋人アン(瀬戸さおり)が来訪、クリスとの結婚を報告しようとする。
と、ここまでは正直、会話の理屈っぽい言い回しにちょっと閉口したけれど、後半、アンの兄ジョージ(金井勇太)が突然現れ、戦時中に工場が起こした欠陥隠蔽事件の真相を追及しだすと、それぞれの激しい動揺にぐいぐい引き込まれる。

戦後まもなくのタイミングで、容赦なく戦争の傷に切り込んだ、戯曲の強靭さにまず驚く。どうやら一般には、家父長的ジョーの欺瞞と、若者らしいクリスの倫理観との相克に、拝金主義批判を読み取るらしい。しかし大谷の造形からは、少し別種の切実な印象を受けた。家族のためという半径5メートルの正義、これくらいならなんとかなるという現代ビジネスマンにもありそうな小さな甘えが、あれよあれよと思ってもみない大惨事を招く。そう考えると、みんな我が子というタイトルは、身内の論理を超えて「社会」をイメージすることの困難を思わせて普遍的だ。
サスペンス要素もあって、舞台に登場しない人物ふたりがカギを握る展開がスリリング。ひとりはアンとジョージの父で、元は工場の共同経営者だったスティーブ。欠陥部品が戦闘機墜落を引き起こした事件で有罪となり、服役中の彼が、いったいジョージにどんな真相を語ったのか。そして戦地で飛び立ち、「行方不明」になったままの次男ラリー。果たしてその生死は… 繰り返しセットをよぎる爆音と機影が、一見平凡な家族の世界に、重くのしかかる。

神野の存在感が突出。田舎っぽくて、人目を気にしていて、積み上げてきた幸せを守ることに必死。ジョージとの再会シーンで「隣のおばさん」の愛情をあふれさせ、緊張感を一気に過去の親密さへと転じるさまには、目を奪われた。瀬戸のみずみずしさが発見。ある決意を胸に秘めた難しい役どころだけど、キレイな立ち姿や細い首に、意思の強さがにじむ。瀬戸康史の妹なんですねえ。
大谷の巧さはもちろん、金井の切なさもいい。なんとドラマ「MIU404」のオタクのスパイダー班班長。この人はノシてきそうだなあ。田島は不器用ながら健闘。2013年の休演事件後、4年のブランクをへて復帰、このユニットでは俳優への出演交渉も担当しているらしい。がんばってほしいです。隣の医師に杉木隆幸、その意地悪な妻に熊坂理恵子、気のいい隣人夫妻に酒巻誉洋と浦佐アリサ。

カーテンコールで神野が挨拶して、「私たちは舞台にいます」との言葉にジンとする。困難なときに、モノを作り続ける人の苦しみと喜び。ロビーには渡辺えりさんの姿も。

20201009-003 20201010-001

Official髭男dism オンラインライブ

Official髭男dism ONLINE LIVE 2020 - Arena Travelers - 2020年10月

今一番のっているピアノポップバンドが、中止になったアリーナツアーをオンラインで9/26に決行。1週間のアーカイブで視聴した。たっぷり2時間、2200円でオーディオコメンタリー(副音声のメンバーおしゃべり、バンドオタクぶりをたっぷりと)バージョンもあって、大満足。
軽快な楽曲と、どこまでも突き抜けていく藤原聡のハイトーンが爽快! 才能ってあるんだなあと思うと同じに、サポート含め合計9人の楽しそうな感じ、凝ったアレンジが、立派なライブバンドだと実感させる。ポップだけど、ちょっとジャズの雰囲気もあるよねー

冒頭にヒット3曲で盛り上げ、中盤、トークボックスが洒落てる「たかがアイラブユー」からギアが上がる。後半に入って「異端なスター」でメンバーがどんどん動き、「旅は道連れ」では楢﨑誠がベースをサックスに持ち替え、全員が円陣。ドラム松浦匡希のボーカルはご愛嬌かな。「夕暮れ沿い」はなんとビッグジャズサウンドが格好いい! 猫ポーズからの「FIRE GROUND」は、ギター小笹大輔のせり上がり&炎&藤原の光るショルダーキーボードで歌謡曲テイストが炸裂。これは広い会場でやりたかっただろうなあ。問答無用のヒット3曲のあと、「ラストソング」が泣かせました…

星空やセピアの映像、「イエスタディ」の雨粒など、アリーナの空間を感じさせる演出で、配信としてのクオリティも高い。エンドロールの大勢のスタッフから、バンドの勢いと並々ならない熱意とともにコストも想像させちゃうけど、プラットフォーム7社を使用、リアルタイム視聴者数は12万人!だそうで、立派です。
以下、セットリストです。

 

1, HELLO
2, 宿命
3, ノーダウト
4, パラボラ
5, ビンテージ
6, Rowan
7, 夏模様の猫
8, イエスタデイ
9, Laughter
10, たかがアイラブユー
11, 115万キロのフィルム
12, 異端なスター
13, 旅は道連れ
14, 夕暮れ沿い
15, FIRE GROUND~Theme Of Daisuke_煉獄の愛猫家_
16, Stand By You
17, Pretender
18, I LOVE...
19, ラストソング

 

 

てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。

マームとジプシー てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。  2020年10月

2年ぶりの藤田貴大。2018年「BOAT」では得意技を超えたと思ったけど、今回は2013年初演作とあってお馴染みのテーマ(少女の日常と感受性、級友の死、片目で見る世界、駅頭の別れ)をリフレイン。いつもの藤田節を楽しみつつ、2011年の震災や今この状況の「てん」における「ひかり」とは、という肝心なところがわかりにくいかな。熱心なファンが集った感じの小金井宮地楽器ホール大ホール、やや上手寄り前の方で4000円。休憩なしの1時間半強。

舞台上には「立体」を象徴する2つのテント。散りばめたおもちゃ、人形や交換した手紙を、奥のスクリーンに映し出す。
時は2001年、中学卒業を控えた春先。9・11や身近で起こった少女殺害事件に深く傷ついたあやちゃん(衣装経験もある、すらりとした荻原綾)は、家出して近所の森にテントを貼る。救えなかった級友(声が個性的な成田亜佑美、今やベテランの風格)が抱え続ける悔恨。もうひとりの級友(吉田聡子)は閉塞に見切りをつけて町を離れ、思いを寄せていた少年(尾野島慎太朗)は大人になった20年後、同じ森のテントに赴く。終盤の涙声、ナイーブさがつくづく独特。

小柄な召田実子(いつものように映像プランも)がバスのドアに挟まれちゃたり、乱暴者の波佐谷聡がちいちゃな猛犬をネジ仕掛けで走らせたり、笑いの要素はいい感じ。イタリア、ドイツ、韓国でも上演したんですねえ。生成りの衣装はsuzuki takayuki。

20201003-001 20201003-048

 

« 2020年9月 | トップページ | 2020年11月 »