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文楽「壺坂観音霊験記」

文楽令和2年 第四部 文楽入門  2020年9月

2月以来、本当に久々の文楽公演。初日の後半と、鑑賞するはずだった2日目がスタッフの発熱ということで急遽休演になるハプニングがあったものの、別の日に振り替えてもらって無事、第四部の文楽入門に足を運んだ。ブランクを乗り越え、伝統の継承を祈る気持ち。
国立劇場小劇場は市松模様の客席はもちろん、太夫が語る床の近くの席はすべて販売対象外。ソーシャルディスタンスの目印が足袋のイラストで可愛い。床本もついた簡単なパンフを無料配布していた。前のほう、上手寄りの席で4500円。1時間。

冒頭に亘太夫の淀みない解説があり、「壺坂観音霊験記」。西国三十三所六番札所の壷阪寺(奈良県高取町)が舞台で、初演は明治12年。初めて見るけど、登場するのはほぼ夫婦だけとシンプルながら、文楽には珍しくハッピーエンドでスカッとする。沢市の地唄、本堂でのご詠歌と、音楽が変化に富んでいて飽きさせないし、幕切れに人形が全身で弾けさす喜びに、舞台再開の思いも重なって爽快だ。
床は前「沢市内」が聴きやすい靖太夫、錦糸がきびきび。後「山の段」は宗助の豊かな三味線にのせて、錣大夫が情感をこめる。ツレは燕二郎。
座頭沢市(玉助)は病気の引け目から、毎日明け方に家を抜け出す妻お里(清十郎)の浮気を疑う。実は夫の眼が治るよう、観音様に通っていたと明かされるものの、それほど祈願しても治らないなら、と沢市の落胆は深まる。屈折していじけた心情が、なんだか現代的だなあ。「三つ違いの兄様と…」の有名なお里の嘆きで、幼馴染とそのまま結婚したお里のごくごく限定された日常、だからこその素朴な思いを切々と表現。三味線や針仕事の、細かい人形の動きも絶妙だ。
セットが変わって夜の山道。お里に励まされて寺を訪れた沢市は、ひとりこもって祈願する、とお里を帰す。ところが祈願どころか、自分がいないほうがお里のため、と谷に身を投げちゃう。胸騒ぎに、慌てて引き返してきたお里も、残された杖、沢市の亡骸を見つけて後を追う。すると雲間から光が差し、岩陰から眩しいキンキラ観音さま(勘介)が登場、感心な二人の寿命を伸ばす、と宣言するびっくりの展開。夜明けの鐘とともに、夫婦は息を吹き返し、なんと眼も治って喜び合う。

大ヒットして、浪曲にもなった演目なんですねえ。別の部では呂勢太夫が療養から1年ぶりに復帰。休演した咲太夫も後半、出演したそうで、まずは一安心です。黒衣ちゃんマスクがお茶目で、思わず購入。
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