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ベイジルタウンの女神

ケムリ研究室no.1 ベイジルタウンの女神  2020年9月

作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチとパートナー緒川たまきによる、新ユニット旗揚げ公演に足を運んだ。年月をへた女同士の、心の交流が味わい深い大人のおとぎ話。お洒落で笑いたっぷりのハッピーエンドに、震災直後の「鎌塚氏」も思い出してしみじみする。世田谷パブリックシアター、当日席がわかるスタイルで、2Fやや上手寄りで1万2000円。贅沢キャストそれぞれの個性を丁寧に生かし、休憩を挟んで3時間半といつもの長尺を飽きさせない。

不動産複合企業の跡取りで辣腕のマーガレット(緒川たまき)は、貧民街ベイジルタウンの再開発を狙い、新興経営者タチアナ(高田聖子)と賭けをして、その貧民街に無一文で乗り込む。ネジが緩んだ住民たちとの、「王様と乞食」的ベタなドタバタを繰り広げつつも、乱暴だけど人の良い王様(仲村トオル)、そんな兄をしっかり支える妹ハム(水野美紀)らの人情に馴染んでいく。ところが実は経営の右腕で婚約者のハットン(山内圭哉)が悪計をめぐらせていて…

お馴染み小野寺修二(振付)、上田大樹(映像)、BOKETA(美術)が情報量ぎっしりの戯曲を美しく、テンポよく見せる。アンサンブルが持つボードに、プロジェクションマッピングで絵の具が滴ったり…と鮮やかだ。
登場人物はキャラがいちいち愛らしい。お嬢様で浮世離れしてるけど、芯の通った緒川が端正に物語を牽引。かつて小間使いだった高田と、甘酸っぱい日々を振り返る会話は舞台に時の奥行きを与え、「百年の秘密」を思わせる名シーンだ。幼い記憶は美化されているかもしれないけど、分かち合う者たちだけの宝物。
もう一方の主役は、はちゃめちゃ悪漢コンビだ。双子を演じ分ける曲者・山内、常に何かを思い違いしてる弁護士の菅原永二が、問答無用の笑いのセンスを存分に発揮する。口下手のかっぱらいヤング松下洸平と、健気なボランティアのスージー吉岡里帆のラブコメが、いいアクセント。このほかマーガレットの執事にMONOの尾方宣久、タチアナの秘書に花組芝居の植本純米、貧民に温水洋一、犬山イヌコ!

いつもながら分厚いパンフが、また充実してる。対談で松尾スズキ、俳優陣の紹介コメントで木ノ下裕一、前川知大、小栗旬、土田英生、北村有起哉、山西惇、古田新太、いのうえひでのり… 演劇界のリーダーのひとりとしてコロナ禍を乗り越えていく手腕、さすがです。

20200922-007

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