歌舞伎「色彩間苅豆 かさね」「双蝶々曲輪日記 引窓」
九月大歌舞伎 2020年9月
感染対策で一幕もの4部制となった歌舞伎座の2カ月目。演目の面白さに配役がぴたりはまり、いよいよ幹部俳優も登場して、楽しかった。2階下手の最前列で各部8000円。
まず第二部で清元の舞踊「かさね」を1時間。木下川(鬼怒川)のほとり、怪しい雨の夜。ダメ人間与右衛門(幸四郎)が、追ってきた不義の相手である腰元かさね(猿之助)から、心中を迫られる。そこに何故か髑髏と卒塔婆、鎌が流れてきて、かさねの顔が恐ろしく変貌。
実はかさねは、与右衛門がかつて手にかけた男の娘とわかる。背景の暗幕が払われて月が出ると、因果の恐ろしさに我を失った与右衛門がかさねを襲い、激しい立ち回りに。ついに倒れたかさねの上に、月が隠れて人魂が現れ、その呪いから与右衛門は逃れることができない。
おどろおどろしい設定ながらアクションが派手。猿之助が海老反りなど、得意のケレンを存分に披露してノリノリだ。幸四郎は身勝手な色男がはまっている。菰などを使って決まる姿が、最近たくさん観た浮世絵そっくりの雰囲気で、2人のコンビネーションもいい。伝承ですねえ。振付は宗家・藤間勘十郎。
いったん劇場を出て、銀座を散歩しお茶してから第三部、秀山ゆかりの狂言を銘打った「引窓」を1時間強。文楽で観ているけど、歌舞伎では意外に初めての演目だ。
9月15日の放生会の前夜、京都石清水八幡近くにある民家。贔屓客のため心ならずも人を殺めた相撲取り・長五郎(吉右衛門)が、実母お幸(東蔵)に暇乞いにやってくる。念願かなって亡父と同じ代官に出世した、なさぬ仲の息子・南与兵衛(菊之助)が、皮肉にも初仕事として夜の間、長五郎の詮議を任されちゃう。遊女だった嫁のお早(雀右衛門)もからみ、互いを思いやる義理と人情が哀しい。
義父から役を継承した菊之助が、色気があって格好いい。吉右衛門さんは足が辛そうだったけど、立派な体格で力士らしく、また無邪気な感じ
が実に上手。ベテラン東蔵もさすがの説得力で、控えめな雀右衛門さんといいバランスだ。
手水鉢や引き窓の小道具を使って、冴え冴えとした秋の月を思わせて風情がある。路銀を投げつけてホクロがとれちゃう可笑しみ、幕切れの爽やかさに相まって、丸本らしい、いい舞台でした。
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