CHESS
CHESS THE MUSICAL 2020年2月
「ライオン・キング」などのティム・ライス原案・作詞による、シニカルな大人のミュージカルを楽しむ。ご存知ABBAのベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァースのキャッチーな曲を、「エビータ」のチェがよかったラミン・カリムルーら、日英の実力派が存分に聴かせる。国家と個人の相克を歌う名曲「ANTHEM」に思わず涙。東京国際フォーラムのホールC、2階下手で、舞台に近い最前列のいい席で1万3500円。
今回は1986年ロンドン初演版の台本による上演。1970年代、米ソ冷戦に翻弄されるチェスプレーヤーたちの愛と挫折を描く。米国の世界チャンピオン、フレディ(長身でお茶目なルーク・ウォルシュ)はナーバスになり、メディアとトラブって自滅。タイトルを手にしたソ連のアナトリー(堂々のカリムルー)は、フレディのセコンドで恋人だったフローレンス(「レ・ミゼラブル」の知的美人サマンサ・バークス)の愛も得て、西側へ亡命する。1年後の世界選手権では、ソ連が威信をかけ、あの手この手でアナトリーとフローレンスを揺さぶり、結局2人は別の道を選ぶ。
母国の策略に苦悩するアナトリー、裏切られてもアナトリーを理解しようとする妻エリアンナ(ブラジルとのハーフ、スヴェトラーナ)、幼いころ母に愛されず、屈折してしまった天才フレディ、ハンガリー動乱で父と国を捨てた過去を持つフローレンス。それぞれの心理が複雑に絡み合う。矛盾だらけの「nobady is nobady'side」は辛い。モデルのひとりは波乱の人生を送った米国人チャンピオン、ボビー・フィッシャーとのこと。
演出・振付が「グリース」などのニック・ウィンストンで、実にお洒落だ。特に試合の緊迫感を表す、見事なアンサンブルの動き! コサックダンスのアレンジも。オケの前に階段、左右にバルコニーを置いたシンプルなセットで、盤面のマスや白黒のイメージをちりばめ、冒頭では冷戦状況をTIME表紙などの映像で端的に。アナトリーとフローレンスが恋に落ちるシーンの星空が、夢のように美しいからこそ、終盤の別れが寒々しい。
舞台回しのアービターは、国立音大出身の佐藤隆紀で得な役。陰険なKGBモロコフ、東京芸大出身の増原英也は低音がよく響いて目立ってました。音楽監督はサザンの編曲やドラマ音楽で活躍する島健(奥さんは島田歌穂)。作品自体、1988年ブロードウェイでは改変版で失敗、コンサート版が誕生するなど、曲折があるんですね。上質な舞台でした~
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