FORTUNE(フォーチュン)
FORTUNE(フォーチュン) 2020年1月
英国の劇作家サイモン・スティーヴンスの世界初演作を、「ブラッケン・ムーア」などの広田敦郎訳、ローレンス・オリヴィエ賞のショーン・ホームズ演出で。仕掛けが多く知的で緊張感があるものの、ファウストものだけに、ただただ救いがなく… これから再演を重ねて磨かれていくのかも。東京芸術劇場プレイハウスの、ちょっと遠い2階上手寄りで1万500円。休憩を挟んで3時間弱。企画・製作はパルコ。
ゲーテ「ファウスト」を現代のロンドンに移し、気鋭の映画監督フォーチュン(森田剛)の転落を描く。あえてだだっ広い空間に、散乱する無数のダイエットコークの空き缶と、ぽつんと灯るコークが詰まった冷蔵庫の明かりが、フォーチュンの孤独、救いがたい虚しさを印象づける。薬物欲しさに知り合った謎の女ルーシー(田畑智子)と、12年間限定ですべての欲望をかなえる契約を結び、芯が強くて魅力的なプロデューサー、マギー(吉岡里帆)を手に入れる。しかし偽りの愛からは安寧を得られず、自暴自棄になって破滅していく。ままならない人生が苦しい。
死んだ父・ショーン役の鶴見辰吾が、のっけから怪しいラップで舞台回しを務めて達者だ。フォーチュンはただ、父親みたいになるのが怖くて、道を踏み外したのか。悪魔の田畑がコケティッシュで、存在感を示す。森田は相変わらず巧いものの、いつもの切なさは控えめだったかな。
ダークファンタジーなんだけど、ルーシーと出会う高層ビルのザ・シャードやら、クリエーターはチャップリン映画を全部観るべき、妙にリアルな契約書をめぐる言い合いやら、細部が作り込まれていて面白い。それだけに、フォーチュンの「目」が何を意味するのか?とか、もやもやも残る。ラストの「砂」は重そうだったなあ。ほかに市川しんぺー、平田敦子、菅原永二。
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