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NODAMAP第23回公演「Q A Night At The Kabuki Inspired by A Night At The Opera」 2019年12月
映画で「ボヘミアン・ラプソディ」現象が起こる前に、クイーンメンバーからオファーを受けて、名盤「オペラ座の夜」にちなんで野田秀樹が作・演出。いつにも増して、野田さん一流の時空を超えたイメージの飛躍に目が回っちゃうけど、メッセージは意外にストレートで、心に響く秀作だ。
シベリア抑留の悲劇からは、人間性の否定に対する強い怒りが、そして「30年後に届く手紙」からは、切ない鎮魂の思いが鮮烈に立ち上る。終わらない争い、世界の分断のなんと罪深いことか。60代の野田さん、全く衰えてません。
東京芸術劇場プレイハウス、後ろ寄り上手で1万2000円。休憩を挟んでたっぷり3時間だけど、長く感じない。
全編にクイーンの楽曲を流しつつ、「見立て」などカブキの色彩が色濃い感じ。お馴染み「ロミオとジュリエット」の構図を、源平の争いに置き換えた。1幕では生き残った「それからの瑯壬生」(ろうみお、上川隆也)と「それからの愁里愛」(じゅりえ、松たか子)が、映画「ゴースト」よろしく若い瑯壬生(志尊淳)と愁里愛(広瀬すず)を見守り、なんとか悲劇を食い止めようとする。ポップなセット(いつもの堀尾幸男・美術、ひびのこづえ・衣装)に、歌舞伎の寺子屋や熊谷陣屋、俊寛を思わせるシーンが散りばめられる。
2幕になると、「届かない手紙」の紙飛行機が爆撃機に転じて、物語がぐっと深まる。若き日の恋人の望み通りに「名(家)」を捨て、無名戦士となった瑯壬生は、尼寺に行って(ハムレット!)従軍看護師となった愁里愛と束の間再会するものの、やがて国家に翻弄されていく。存在を「なかったこと」にしてしまう残酷さ、深い喪失感と絶望、それでも思い続ける、ということ。終幕に至って、クイーンの名曲の叙情が胸に染み入る。ドラマの合間には2019年を象徴する「ハカ」など、遊びもぎっちりでした~
俳優陣では松が凛として出色。マイムの仕草一つひとつが、高水準で美しい。頼朝役の橋本さとしのかつらが落ちちゃうアクシデントで、咄嗟にポーンとかつらを蹴飛ばす瞬発力! さすが舞台女優、進化してるなあ。
対する上川は、コメディーセンスと生真面目さの切り替えで包容力を発揮。個人的には殺陣の切れ味が、今回の発見でした。注目の初舞台、広瀬は声がよく伸びて、存在がキラキラしていて楽しみだ。志尊も健闘。金満・清盛と、おどおどした兵士の2役を演じた竹中直人が手練れぶりを見せつける。ほかに源の乳母で野田秀樹、平の母などで羽野晶紀、平の家臣で小松和重、巴御前などで伊勢佳世ら。
分厚いパンフレットも豪華で、なんと吉永小百合との往復書簡も収録。チケットは購入時に来場者の氏名を登録したうえ、「指定の公的な文書」で本人確認する厳重さだった。野田さん、本気です。人気公演のチケットでは、こういう煩雑さがデフォルトになっていくのかしらん。
劇場前の西口公園がきれいになって、屋外ステージもできてました~
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