2019喝采づくし
2019年のエンタメ総まとめ、ベストワンはなんといってもU2のTHE JOSHUA TREE TOUR! 夏のアイルランド旅行をきっかけに足を運んだんだけど、エンタメとしてすべてが高水準で、度肝を抜かれました。ごくシンプルなギターロックで、ここまで感動するとは。まだまだ知らない体験がある、と思いましたです。
オペラは新国立劇場芸術監督、大野和士の手腕が光った。東京文化会館との共同制作「トゥーランドット」はスケールが大きく、バックステージツアーまで満喫。ダブルビルの新制作「フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ」も洒落てました~ 来日の英国ロイヤルオペラ「ファウスト」はビターな演出とグリゴーロで魅せた。
ミュージカルではケリー・オハラ&渡辺謙主演、トニー賞リバイバル作品賞を得た「王様と私」が、古風ながらMETオペラでお馴染みバートレット・シャーの知的、美しい演出で、小国の苦悩が際立った。
伝統芸能は期せずして菊之助に注目。令和スタートの10連休にあたった團菊祭「め組の喧嘩」が、芸の継承と次世代の勢いを感じさせ、初夏らしい爽やかな気分。そして年末の新作「風の谷のナウシカ」は壮大なSFに荒唐無稽がはまって、歌舞伎という芸能の包容力を実感。歴史的な新作だったかも、という意味で2019ベストツーかな。ほかに舞踊「二人静」で、児太郎を見直しました。
文楽も咲太夫の人間国宝というニュースを祝いつつ、中堅の成長に注目。年末「一谷嫩軍記」で、いよいよ玉助さんが大役・直実を演じ、太夫も千歳、織、呂勢が頑張ってた。
能狂言は平成最後、満開の夜桜能という抜群のシチュエーションで人間国宝・野村萬、梅若実の至芸を堪能し、梅若能楽学院会館にもお邪魔しました。実さんは病から復活、パリ公演をこなして萬さんとともに芸術文化勲章を受章。
落語・講談は定番の喬太郎、兼好、三三、一之輔らのほか、「双蝶々」を対照的な談春、正蔵で味わった。また歌舞伎もよかった演目「め組の喧嘩」を、春陽さんで。古典はこういう「つながり」がたまりません。
演劇は不条理、ギリシャ劇等々相変わらず盛りだくさん。なかでも栗山民也演出「カリギュラ」は、難しかったけど、菅田将暉が不可解な衝動をみずみずしく演じて突出していた。相変わらず手応えある仕事ぶり。というわけでベストスリー。
先輩格では蓬莱竜太の新作「渦が森団地の眠れない子たち」で、小6役の藤原竜也が別格の存在感だった。愛されたいと願う人の弱さ、集団の息苦しさのなかにも、希望を感じさせる秀作。話題の野田秀樹「Q」は、いつにも増してイメージを飛翔させつつ、反戦のメッセージが強く心に響いて健在。松たか子が、凛として素晴らしかった。大好きな岩松了さんの「空ばかり見ていた」は、登場人物たちの、いずれも一方通行の思いが胸を締め付ける。森田剛、勝地涼が存分に色気を発揮。三谷幸喜も歌舞伎座進出などで、満足感が高かった。
再演では、ようやく観られたケラリーノ・サンドロヴィッチのお洒落で切ない「キネマの恋人」、長塚圭史のどろどろ「桜姫」が、印象は全く異なるけれど、それぞれ才気が際立ってた。
2020年は東京五輪、團十郎襲名と祝祭の年。また面白い舞台が楽しみだ!