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ドン・パスクワーレ

ドン・パスクワーレ  2019年11月

新国立劇場のオペラは、残念ながら幕開け「エウゲニ・オネーギン」が台風で休演となり、今シーズン初の鑑賞。新国立初登場の演目で、大人っぽいコメディだ。ドニゼッティの甘く気品ある旋律と、一流歌手たちの古風で華麗なベルカントの競演で、明るい気分になりました! 新国初登場、ベルガモ生まれのコッラード・ロヴァーリス指揮、東京フィル。中央あたりのいい席で24300円。休憩を挟んで約2時間半。
ドン・パスクワーレといえば2010年にMETライブビューイングで、ネトレプコのはじけっぷりに大笑いした演目。最近でもダイジェスト映像に名場面として登場してますね。今回のノリーナ、当初予定のダニエル・ドゥ・ニースが降板しちゃったんだけど、代わった「ライジングスター」(大野和士芸術監督)ハスミック・トロシャン(アルメニア生まれのソプラノ)はとてもよかった~ 1幕「騎士はその眼差しに」など、超絶ハイトーンやアジリタなど技巧十分、しかも美形。賢さと快活さが備わってました。
対する男声陣2人は、ベテランで芸達者。タイトロールのロベルト・スカンディウッツィ(イタリアのバス)はお髭など貫禄十分で、滑稽になり過ぎず、医師マラテスタのビアジョ・ピッツーティ(イタリア・サレルモ出身のバリトン)も余裕たっぷり、格好良く仕掛け人を楽しんでいる感じ。大騒ぎの3幕「お嬢さん、そんなに急いでどこへお出かけ」や、早口が軽やかな「静かに、今すぐに」で実力を発揮してました。甥エルネストのマキシム・ミロノフ(ロシアのテノール)はちょっと弱かったけど、あなた任せなこの役には合ってたかな。
お話は伝統的な、身も蓋もないオペラ・ブッファだ。金持ち老人は自分が勧める縁談に見向きもしない甥に意地悪して、主治医(甥の親友)の妹(実は甥の恋人)との年の差婚に浮かれちゃう。これがとんだ罠で、散々に懲らしめられる。
イタリアの気鋭ステファノ・ヴィツィオーリの演出は、1994年スカラ座初演の名プロダクションとのことで、フランス第一帝政スタイルの衣装など伝統的ながら、シンプルで非常に洗練された印象だ。ドン・パスクワーレ邸は美術品や書物が並ぶ。演目の初演1843年はウィーン体制の崩壊寸前。ローマで台頭したブルジョワジーの、経済力を重んじる生真面目さがにじむ。だからこそタイトロールがただの笑いものにならず、余韻が膨らむんですね。ノリーナが乗り込んでからの混乱シーンでは、宝石、ドレスや台所のご馳走など惜しげなく小道具を散りばめ、使用人たちの動きもふんだんで楽しい。面白かったです!
20191117-002



 

 

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