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渦が森団地の眠れない子たち

Sky presents 渦が森団地の眠れない子たち  2019年10月

蓬莱竜太が新作を自ら演出。愛されたいと願う人の弱さ、集団の息苦しさを切なく描き、苦いなかにも希望を感じさせる秀作だ。小6役を藤原竜也が別格の存在感で演じきって、さすが。
藤原ファンに演劇好きが混じった感じの新国立劇場中劇場、中央あたり通路すぐ後ろのいい席で1万800円。休憩を挟んで2時間半強。

郊外の20棟もある団地や近くの森を、そそり立つ抽象的な壁などで表現(美術は「死と乙女」などに続いて松井るみ)。圭一郎(鈴木亮平)は心に傷を抱え、空想癖のある少年で、震災で家を失い「渦が森団地」に引っ越した初日、電飾自転車を乗り回し、エアガンを背負った悪ガキ鉄志(藤原)とでくわす。母(奥貫薫)同士が双子の姉妹なのに、何故か疎遠だった従兄弟だと判明。この粗暴な「キング」鉄志と「血縁の誓い」をかわして、振り回される羽目になる…

大人がランドセルを背負って子供を演じるわけだけど、「演劇力」で成立しちゃうことは2012年のモダンスイマーズ「楽園」で証明済み。子供らしいやり取りに笑いながらも、閉じた集団内の暴力や、愛情のねじれ、嫉妬や嘘がリアルに胸をつく。このあたりは重松清レベルに重い。加えて背景には、はっきりとは語られない母同士の長年の確執や、復興に揺れるコミュニティーの閉塞もにじんでいて、重層的だ。

なんといっても緩急自在な藤原が、ときに徹底的に憎たらしく、ときに切なく舞台を牽引。虚勢を張っているけれど、誰よりも傷つき、圭一郎の傷も本能的に感じとっている。ラストは本当に泣かせます。対する鈴木は、物静かな追憶の語りを挟み、全体を冷静に相対化していて、いいバランスだ。空想の世界地図の、なんと哀しいことか。
はつらつとした妹の青山美郷ら、子供グループの面々も達者。奥貫は姉妹2役を静かに演じ分け、終盤、青山に語る言葉に芯の強さがくっきり。独居老人「安部ちゃん」のお馴染み木場勝己が、いわば社会の視点を示し、子供の残酷さや老人の寂しさで陰影を添えていた。
企画制作がホリプロのせいか、舞台写真まで物販が充実してました。
 

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