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「三人吉三巴白浪」「二人静」

芸術祭十月大歌舞伎  2019年10月

即位礼の祭日に夜の部へ。歌舞伎座では15年ぶりという通し狂言の「三人吉三」を、松緑、愛之助、松也のハツラツとした配役で。黙阿弥節の、しょうもない人間の浅はかさが、歌舞伎らしくていい。玉三郎の能舞踊も見応え十分です。中央前の方のいい席で1万8000円。休憩2回を挟んで4時間。

序幕は名場面・大川端庚申塚の場で、2010年に菊五郎、吉右衛門、亡き團十郎の大顔合わせ、また2016年には菊之助、海老蔵、松緑で観ている。今回はお嬢が梅枝と交互出演の松也で、男っぽいながら色気があり、笑いもいい呼吸だ。お坊の愛之助もボンボンらしくて格好いい。二枚目ぶりが仁左衛門さんに似てきたかな。兄貴分の和尚は松緑。
二幕目以降はシネマ歌舞伎で、コクーンの串田版を観たことがある。ワルだけど単純な若者3人が、百両と脇差「庚申丸」、そして犬のたたりをめぐって、どんどん運命にからめとられていく。まず割下水伝吉内の場で、伝吉(歌六)と娘おとせ(夜鷹だけど可憐な尾上右近)、恋仲になった十三郎(コミカル封印で上品な巳之助)の因縁が語られる。歌六は元悪党の雰囲気をのぞかせて凄み十分。続く本所お竹蔵の場では、お坊がそんな伝吉を手に掛けちゃう。
お弁当休憩後の三幕、巣鴨吉祥院本堂の場は、荒れ寺がいよいよ殺伐。堂守(達者な坂東亀蔵)のひょうきんさに、しばし息をつく。もう逃げ切れないと、共に死を決意するお坊とお嬢の怪しさ、無頼なりに和尚を慕うピュアな感じにゾクゾク。盆が回ると裏手墓地の場。なんと和尚が、まさにおとせ、十三郎を手に掛けようとする浮世絵のようなシーン。水を飲ませたりして、無茶苦茶だし凄惨なんだけど、松緑の持ち前の暗さが効果的で、なんだか切なくなる。これはこれで名場面。
大詰・本郷火の見櫓の場は雪の立ち回りと、八百屋お七の見立てで、お嬢が禁断の太鼓を打ち鳴らす。いやー、面白かった…

休憩を挟んでラストはお約束、玉三郎オンステージ。一転して、世阿弥の能をベースにした伝統美あふれる「二人静」だ。シンプルだけど目が離せない緊張感。
まず晴れ晴れとした松の幕を背景に、上手に長唄囃子連中、後方に笛、小鼓、大鼓。春の吉野の菜摘川に、勝手明神に仕える若菜摘(児太郎)がやってくると、すっぽんから静御前の霊(玉三郎)が登場、回向してほしいという。共に能らしく、ふっくらした着付けで、春の花が咲き乱れる「色入り」で若々しい児太郎、銀に秋の草花をあしらった玉三郎と、対照的な衣装が、きらびやかで目を奪われる。
霊が若菜摘の肩に触れて乗り移ると、名白拍子だった静御前なら、と神職(彦三郎が朗々と)が舞を所望。いったん厳かなすり足で引っ込んだ後、いよいよ2人が白い長絹に烏帽子、緑の扇で再登場。幕が上がって舞台奥には竹本連中、箏曲連中まで加わる。豪華です。「しづやしづ」の舞になり、2人がぴたりとシンクロ。扇で波を表したりして、実に見事。そっくりの動きなんだけど、目線なんかが微妙に違うのも興味深い。
正直、児太郎さんは色気が今ひとつかな、と思うんだけど、絶賛強化中ですねえ。12月にはなんと阿古屋第2弾もあるとのことで、頑張りどころなのかな。楽しかったです!

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