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王様と私

リンカーン・センターシアタープロダクション ミュージカル「王様と私」  2019年7月

ケリー・オハラと渡辺謙の主演で、トニー賞最優秀リバイバル作品賞を獲得したブロードウェイミュージカルが来日。メトロポリタン・オペラでお馴染みバートレット・シャーの理知的な演出で、大国のはざまにいる国家の苦悩が際立つ。
リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタインⅡ作詞・脚本の1951年初演とあって、戯曲の古風さは否めない。しかしアジア人は全員、アジア系俳優が演じているし(リプリゼンテーションと呼ぶそうです)、1860年代に列強と対峙したタイ王の孤独がくっきりして、現代的な味つけだ。Shall we dance?がこんなに切ない曲だったとは。単なる社交ダンスを教える歌とばかり思っていて、御免なさい。2018年ロンドン公演のカンパニー。年配客が目立つ東急シアターオーブ、上手寄り前の方で1万9000円。休憩を挟んで3時間。
まずタイシルクを思わせる金ピカの幕が美しい。動く柱やカーテンをうまく使い、テンポよく場面転換していく。美術はマイケル・ヤーガン。タイ舞踊風のバレエなど、初演のジェローム・ロビンスをベースにした振付はクリストファー・ガッテリ。
原作は実話をベースにしており、新人だったユル・ブリンナー主演の1956年映画版が有名。先進国イギリスから招かれた教師アンナ(オハラ)が、封建的なシャム王(渡辺)と激しく対立するストーリーだ。王は粗野で子供っぽい一方、重責を一身に負って煩悶する複雑な人物。渡辺が健闘し、可愛げや色気を漂わす。なにしろ東のフランス領カンボジア、ベトナム、西の英領ビルマ(ミヤンマー)の緩衝地帯として、植民地化を回避しつつ、コメの輸出を推進して国の礎を作った人物だものなあ。
そして、いっぱいいっぱいの渡辺を受け止める、オハラの豊かな情感が素晴らしい。まさにシルクのような歌声。アンナの尽力でなんとかイギリス特使を歓待したあと、束の間の解放感にひたり、若い恋のときめきを思う2人のダンスシーンに、じんとする。
遅れたアジアが西洋的価値観によって解放される、という安易な結論だけでもない。皇太子はともかく、王はアンナの主張を受け入れないまま息を引き取る。それでも違いを超えて互いに尊敬しあい、気持ちは通い合うのだ。
第一王妃チャン夫人はこちらもトニー賞、貫禄たっぷりのルーシー・アン・マイルズ。ビルマからの「貢ぎ物」タプティムは可憐なキャム・クナリー、クララホム首相はなんと大沢たかお。
20190714-030

 

 

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