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オン・ザ・タウン

佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2019 ミュージカル オン・ザ・タウン   2019年7月

「王様と私」に続き、古典ミュージカルの王道ぶりを楽しむ。レナード・バーンスタイン生誕100年の締めくくりとして、1944年初演の初舞台作品を、弟子である佐藤裕のタクトで。24時間タイムリミット付きのドタバタラブコメディだ。都市観光と、つかの間の恋。スピーディーなメロディが、あっけらかんと楽しい。
兵庫県と県立芸術文化センター制作で、オケは同文化センター管弦楽団。佐渡ファンが多そうな東京文化会館大ホール、中ほどの席で1万5000円。休憩を挟んで2時間半。
ストーリーは1949年にジーン・ケリー、フランク・シナトラで、映画「踊る大紐育」になったもの。水兵3人が1日だけの休暇を、憧れのNYで過ごすことになる。ケイビー(バリトンのチャールズ・ライス)が地下鉄のポスターの女性アイヴィ(バレエ出身のケイティ・ディーコン)に一目惚れし、アイヴィ探しの途中で、仲間のチップ(バリトンのアレックス・オッターバーン)は肉食系タクシードライバー・ヒルディ(メゾのジェシカ・ウォーカー)、同じく仲間のオジー(テノールのダン・シェルヴィ)は人類学者クレア(北アイルランド出身のソプラノ、イーファ・ミスケリー)と出会う。声楽教師(低音コントラルトのヒラリー・サマーズ)、クシャミ連発のルームメート(ソプラノのアンナ・デニス)、振り回される気の毒な婚約者(バスのスティーブン・リチャードソン)らが入り乱れて大騒ぎだ。
キャストはロンドンオーディションだそうで、オペラ歌手がメーンながら、コミカルな演技、軽快な動きも高水準。英国ロイヤル・オペラなどのアントニー・マクドナルドの演出は、キッチュな書き割り風。観光案内さながら自然史博物館、カーネギーホール、タイムズスクエア、そしてナイトクラブやコニーアイランドのキャバレーへと巡っていく。
ラテンやトルコ風を含む振付は、英国ロイヤルオペラのプリンシパルダンサーだったアシュリー・ペイジ。なんと初演は「王様と私」のジェローム・ロビンズなんですねえ。ミュージカルの歴史を感じます。ひょうごプロデュースオペラ合唱団は、関西の声楽家を特別編成。

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二度目の夏

M&Oplaysプロデュース 二度目の夏  2,019年7月

岩松了作・演出。別荘の庭のワンセットで、新婚2年めの夏を過ごす若社長夫妻と周囲の人々、それぞれの叶わない思いが交錯する。抑えきれない嫉妬、暗い情熱、コミュニケーションしているのに歪んでいく関係。すっかり駅が様変わりした下北沢、本多劇場の中ほどで7000円。休憩無しの2時間強。
いつもながら物語は繊細な会話劇だ。家業を継いでいる慎一郎(東出昌大)は出張の間、別荘に残る妻いずみ(水上京香)の話し相手を、後輩の学生・北島(仲野太賀)に任せる。ベテラン使用人の道子(片桐はいり)はいずみと北島の親密ぶりに気をもみ、秘書・上野(「セールスマンの死」がよかった菅原永二)と家政婦・早紀子(イキウメでお馴染み清水葉月)の秘めた仲も、徐々に怪しくなっていく…
新たに名字「仲野」を名乗る太賀が、期待通り出色だ。慎一郎への憧れと不安定さ、状況からの逃避。受け止める東出は、独特の体温の低い感じと苛立ちが、役に合っている。亡くなった父母の関係に深く傷ついていて、最も親しい人を試してしまうのが哀しい。そして片桐さん。複雑な状況を相対化する役回りで、実に巧い。長いこと大事にしてきたものが、指からこぼれ落ちちゃう焦りを体現する。
お洒落で上品な要素は、岩松さんならでは。太賀が庭先でギターをつまびくシーンや、庭を巡る小川。緊張感が高まるなかで、水に飛び込んじゃう菅原、電機屋の男で自ら登場する岩松さんが、タイミングよく笑いを差し挟む。水上の可憐さ、清水のいたたまれなさもいいバランス。美術は田中敏恵。
戯曲も読みたいな~ 客席には栗原類くんの姿も。

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美しく青く

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019「美しく青く」 2019年7月

不器用な庶民の愛おしさを描いたら、折り紙付きの赤堀雅秋作・演出。今回は高齢化と野生の猿に侵食されつつある、被災地での群像劇だ。冴えない日常を淡々とたどるようでいて、それぞれのチリチリする思いが迫る佳作。相変わらず巧いなあ。シアターコクーン中段で1万円。休憩なしの2時間強。
保(向井理)は自警団を指揮しての、猿退治にのめり込んでいるが、仲間の勝(大東駿介)らとはぎくしゃくし始めている。偏屈な老人・片岡(平田満)には協力を拒絶され、気のいい役場の箕輪(大倉孝二)に対策を求めるものの、埒が明かない。妻・直子(田中麗奈)は災害で娘を失った傷を抱え、また認知症の実母(銀粉蝶)の世話に疲れ果てている…
深刻な状況に、お馴染みのリアルなトイレネタ、スナックでのうだうだで、トホホな笑いを散りばめる。突破口など開けるわけもないのだけれど、それでも人々はここで暮らしていくのだ。そびえ立つ防潮堤に夫婦がたたずむラスト、後ろ姿に青空と海を感じて、ちょっと温かい気持ちになる。美術は土岐研一。
スナックの世話焼きママ・秋山菜津子が、抜群の安定感で舞台回しを務め、大東と大倉が切なさ、やるせなさを体現。向井はやや求心力が弱いけれど、そこは役の個性と合っていたかも。赤堀は訳あり風の無口なスナック店主で出演も。ほかに勝の妹・横山由依(元AKB総監督)、自警団の駒木根隆介、森優作、福田転球が丁寧な演技。
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トゥーランドット

トゥーランドット  2019年7月

新国立劇場オペラのシーズン締めくくりは、2年がかりで初めて東京文化会館と共同制作する「オペラ夏の祭典」。スケール大きく、聴き応え、見応え十分の舞台です。芸術監督の大野和士が指揮し、オケはなんと音楽監督を務めるバルセロナ交響楽団を招聘。2階席前の方で、大掛かりなセットもつぶさに。2万9160円。休憩2回を挟んで約3時間。
歌手は高水準で、タイトロールはワーグナーでお馴染みイレーネ・テオリン(スウェーデン出身のソプラノ)。期待通りの迫力だ。カラフのテオドール・イリンカイ(ルーマニアの若手テノール)も伸び伸びとして、負けてない。そして何といっても、英国を本拠とするリューの中村恵理が、可憐なだけでない芯の強さを好演。アルトゥム皇帝の持木弘ら、日本人キャストもいいバランスだ。
言わずと知れたプッチーニの美しい旋律に対し、演出は刺激的。バルセロナ五輪開幕式を手掛けたアレックス・オリエは、まずステージいっぱいに、モノトーンの巨大なインド階段井戸を組み立てた。民衆が底辺で蠢くなか、天上から姫と皇帝が、巨大宇宙船で上空から降りてくるスペクタクル。支配と抑圧、階層の分断がくっきりする。タタールを追われた王子カラフの、王位への執着も強烈だ。
冒頭ではなぜ姫が残酷になったのか、その根っこのトラウマを見せる。そのうえでラストを通常のおとぎ話から、大胆に読み替え。確かにプッチーニの絶筆を書き足したとあって、リューが犠牲になり、姫が改心しちゃうハッピーエンドだと、ご都合主義は否めない。今回はリューが倒れた後も舞台上に残り、決して改心しない誇り高い姫の、究極のプロテストで幕を閉じる。悲劇なんだけど、納得感はあったかな。
分厚い合唱は、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、びわ湖ホール声楽アンサンブル。児童合唱はTOKYO FM少年合唱団。贅沢~

終演後、6倍の確率をかいくぐってバックステージツアーに参加できました。巨大セットの迫力を堪能。テオリン様が各幕の冒頭から、狭い宇宙船で待機しているというのは驚きでした。

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DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2019

かんぽ生命presents 史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2019  2019・7

4年に一度のワンダーランドと30周年が重なった、記念すべきコンサート。お祭り感に加えて、豪華バンドとダンスでファンクを楽しめる、本格ライブでした~ さいたまスーパーアリーナ、入場時に席がわかるスタイルで、200レベルで9720円。たっぷり3時間半。
以下ネタバレを含みますので要注意。



入場前にグッズを購入。贅沢なアディダスジャケットや金ラメ文字が目立つTシャツなど。プログラムはインタビュー満載の190ページ! フライドチキンなどを席に持ち込み、まずは腹ごしらえ。アルコールは売ってませんでした。
ステージはいつもながら、チャレンジに満ちてました! 永遠の天才少女・吉田美和54歳の抜群の求心力と、中村正人の安定感は健在。お馴染み客席上を自在に飛び回る「3Dフライト」は、さいたまアリーナ初とのこと。ステージまるごと後方席へダイナミックにせり出し、リフトに登り、自転車で飛び、あらゆる席の近くで歌うし、アンコールでは花火も! ちょっとイヤモニが不調だったみたいだけど。
選曲はワンダーランドのオールタイム・ベストというイメージを覆し、渋めのアルバム曲が多め。美和ちゃん、MCで気づかってたけど、洋楽チックな音楽性が前面に出て、大会場なのにライブハウスのような親密さもあって良かった~ なんとEarth, Wind & Fire!のSonny EmoryとT-SQUAREの坂東慧が、ダブルドラムで対決。ホーンにはHuey Lewis & The NewsのJohnnie Bamont、Tower of PowerのGreg Adams、DIMENSIONの勝田一樹ら。泣ける~
30年を振り返る凝った映像や、客席のダチョウ倶楽部・肥後リーダー紹介も。さあ、次の記念イヤーは50周年だ!
以下セットリストです。


1 A theme of the WONDERLAND
2 MERRY-LIFE-GOES-ROUND
3 あなたとトゥラッタッタ♪
4 あなたに会いたくて
5 KNOCKKNOCK!
6 ONE LAST DANCE, STILL IN A TRANCE
7 さよならを待ってる
8 Drum session
9 世界中からサヨウナラ(3Dフライト)
10 すき
11 愛してる愛してた
12 忘れないで
13 THEWAY I DREAM
14 ねぇ
15 SPOIL!(FUNK THE PEANUTS)
16  うれしい!楽しい!大好き!(ドリーザブートキャンプ)
17 薬指の決心
18 行きたいのは MOUNTAIN MOUNTAIN
19 7/7、晴れ
20 I WAS BORN READY!!
21 かくされた狂気!
22 ウソにきまってる
23 hyde&seek
24 MEDICINE
25 朝がまた来る
26 さぁ鐘を鳴らせ
27 何度でも
28 大阪LOVER
29 決戦は金曜日
30 サンキュ.

encore
31 あなたのように
32 あの夏の花火
33 未来予想図II

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王様と私

リンカーン・センターシアタープロダクション ミュージカル「王様と私」  2019年7月

ケリー・オハラと渡辺謙の主演で、トニー賞最優秀リバイバル作品賞を獲得したブロードウェイミュージカルが来日。メトロポリタン・オペラでお馴染みバートレット・シャーの理知的な演出で、大国のはざまにいる国家の苦悩が際立つ。
リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタインⅡ作詞・脚本の1951年初演とあって、戯曲の古風さは否めない。しかしアジア人は全員、アジア系俳優が演じているし(リプリゼンテーションと呼ぶそうです)、1860年代に列強と対峙したタイ王の孤独がくっきりして、現代的な味つけだ。Shall we dance?がこんなに切ない曲だったとは。単なる社交ダンスを教える歌とばかり思っていて、御免なさい。2018年ロンドン公演のカンパニー。年配客が目立つ東急シアターオーブ、上手寄り前の方で1万9000円。休憩を挟んで3時間。
まずタイシルクを思わせる金ピカの幕が美しい。動く柱やカーテンをうまく使い、テンポよく場面転換していく。美術はマイケル・ヤーガン。タイ舞踊風のバレエなど、初演のジェローム・ロビンスをベースにした振付はクリストファー・ガッテリ。
原作は実話をベースにしており、新人だったユル・ブリンナー主演の1956年映画版が有名。先進国イギリスから招かれた教師アンナ(オハラ)が、封建的なシャム王(渡辺)と激しく対立するストーリーだ。王は粗野で子供っぽい一方、重責を一身に負って煩悶する複雑な人物。渡辺が健闘し、可愛げや色気を漂わす。なにしろ東のフランス領カンボジア、ベトナム、西の英領ビルマ(ミヤンマー)の緩衝地帯として、植民地化を回避しつつ、コメの輸出を推進して国の礎を作った人物だものなあ。
そして、いっぱいいっぱいの渡辺を受け止める、オハラの豊かな情感が素晴らしい。まさにシルクのような歌声。アンナの尽力でなんとかイギリス特使を歓待したあと、束の間の解放感にひたり、若い恋のときめきを思う2人のダンスシーンに、じんとする。
遅れたアジアが西洋的価値観によって解放される、という安易な結論だけでもない。皇太子はともかく、王はアンナの主張を受け入れないまま息を引き取る。それでも違いを超えて互いに尊敬しあい、気持ちは通い合うのだ。
第一王妃チャン夫人はこちらもトニー賞、貫禄たっぷりのルーシー・アン・マイルズ。ビルマからの「貢ぎ物」タプティムは可憐なキャム・クナリー、クララホム首相はなんと大沢たかお。
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落語「寄合酒」「そば清」「元犬」「磯の鮑」「仏壇叩き」

特撰落語会 柳家喬太郎・柳家三三二人会  2019年7月

雨の七夕に、安定してハイレベルの二人会。グループ客も目立つ地元・杉並公会堂、中ほどの席で3700円。仲入りを挟んで約2時間。
前座は三遊亭楽べえで「寄合酒」。円楽のお弟子さんですね。空き地の拾い物がお味噌で、角の乾物屋がとんだ目に遭うオチまで。大勢出てくる噺をそつなく。
本編は喬太郎からで「そば清」。蕎麦屋の客が、居合わせた食いっぷりのいい男と何枚食べられるか賭けをして、負け続ける。それもそのはず男は通称そば清という名の知れた大食い。大勝負に備えて信州に出かけ、大蛇が消化に使った草を手に入れるが、実はそれは人間を溶かすものだった… 落語ならではの蕎麦を食べるシーンの臨場感、そして蕎麦が羽織を着ているという、なんともシュールなオチが鮮やか。
続いて三三で、お馴染みの「元犬」。何回か聴いてるけど、オマワリの繰り返しなどバカバカしさが増している感じ。
仲入り後も三三で「磯の鮑」。与太郎が仲間にかつがれ、ご隠居に「儲かる女郎買い」を習いに行く。「せめてモテるように」と教わったことを、吉原で実行。色っぽさとスピード感がさすが。
そしてトリは喬太郎で、マクラ無しで「指物師名人長二」の発端「仏壇叩き」。初めて聴くけど喬太郎さんは、けっこうかけてるんですね。明治20年に圓朝が新聞に連載した噺で、モーパッサン「親殺し」をベースにしたサスペンスタッチの名人伝とか。蔵前の札差が気難しいので知られる長二に仏壇を発注。手間賃百両と言われてごねるが、才槌で叩いてもびくともしない出来栄えに感服する。普通の人間のこずるい面を嫌味なく。「笑いがないので」と言いながら、達者な口調にすっかり引き込まれました。物語はこのあと湯河原に舞台を移して、親との再会などが展開されるようです。充実。

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