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運命の力

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2018/2019 運命の力 2019年5月

初めてロイヤルオペラのライブビューイングを鑑賞。今シーズン随一の話題作、ヴェルディ✕ネトレプコ✕カウフマンという豪華ステージを堪能する。3月初日で、指揮は来日を控える音楽監督アントニオ・パッパーノ。METのようにバックステージインタビューとか臨場感たっぷりの演出はないけれど、幕間にパッパーノがピアノを弾く解説ビデオが挟まったりして、勉強になる。「ヴェルディは信心深かった」とのこと。
いろんな素晴らしい公演が楽しめて、ライブビューイングも進化しているなあ。公園沿いで絶好のロケーションのTOHOシネマズ日比谷、スクリーン1のゆったり革張りのPボックスシートで6000円。休憩2回で4時間20分は、さすがに長いけど。
演目は2015年に新国立劇場で鑑賞。震災で一度中止になったという感慨もあり、華麗という言葉がぴったりの旋律に酔った記憶がある。今回もお馴染みの序曲から、運命を暗示する3連音、切なくうねるバラードなど、キャッチーでスケール大きい旋律が盛りだくさんだ。パッパーノが人物の移り変わる心理を、くっきりと聴かせる。
歌手は役にぴったり。まず圧巻は、初役というレオノーラのネトレプコ! 駆け落ちに失敗、恋人アルヴァーロが誤って父を撃ち殺す悲劇から修道院に隠棲。運命の再会を果たすも、ラストは兄ドン・カルロに討たれちゃう散々なヒロインだ。終盤は白髪交じりになりつつ、柔らかく貫禄ある声で魂の救済を求めるアリアを存分に聴かせます。
アルヴァーロのカウフマンがまた、持ち前の暗さ、悲しさが合って、一段とスケールアップした印象。戦場で、また修道院で、一度は友となったドン・カルロとの決闘に追い込まれ、またしても殺してしまう。レオノーラを抱いてのラストは、まさにドラマチック。一方、復讐にとりつかれたドン・カルロのルドヴィク・テジエも、カウフマンとの声の応酬で白熱。フランス出身、最高峰のヴェルディ・バリトンだそうで、悲劇のキーマンらしいクセのある存在感だ。
脇は2人のイタリア人バスで、修道院長はお馴染みフルラネットで安定。修道士のコルベットは唯一コミカルな演技で変化をつけていた。そして冒頭に殺されちゃう父・侯爵の1940年生まれの大ベテラン、ロバート・ロイドで、大きな拍手を浴びてました。
クリストフ・ロイの演出(オランダ国立劇場と共同制作)は、舞台を18世紀から20世紀前半に置き換えてお洒落、かつわかりやすい。特に序曲で、兄妹の子供時代を加えたのが独創的だ。厳格な父、遊んでばかりの兄、そして可愛い弟の不慮の死が、兄に強い劣等感を植え付けたという解釈で、後の執念深さの伏線になる仕掛け。父の死の映像を繰り返し投影して、レオノーラを追い詰めていく工夫もあった。3幕の戦場以外は、侯爵家や教会を一セットのアレンジで描き、シンプルながら閉塞感が強い。ドイツ出身でローレンス・オリヴィエ賞受賞者、新国立の「イエヌーファ」もシャープだったなあ。

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