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文楽「鶊山姫捨松」「壇浦兜軍記」

第206回文楽公演 第3部  2019年2月

2019年の文楽はじめは、充実の第3部へ。85歳の人間国宝・吉田簑助、65歳の桐竹勘十郎師弟が圧巻だ。イジメられる女の物語ながら、結末は痛快で気分がいい。満員の国立劇場小劇場の、中央あたりで6000円。休憩を挟み2時間半。
まず珍しい「鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)」中将姫雪責の段。並木宗輔の1740年初演作。奈良・当麻寺(たいまでら)の「当麻曼荼羅」を蓮糸で織り、20代で女性として初めて成仏を遂げたという「中将姫伝説」に基づく。折檻シーンがあんまりなんだけど、祈る女・姫の聖女ぶりが際立って見ごたえがある。
時は奈良時代。善玉・天皇サイドの右大臣・豊成とその娘・中将姫、女房桐の谷と、悪玉で長屋王子を担ぐ大弐広嗣と姫の継母・岩根御前、女房浮舟が対立している。冒頭は派手な舞踊風で、靖太夫・錦糸が明朗に。桐の谷(一輔)と浮舟(紋臣)が姫の手紙を巡って喧嘩となり、なんと紅白の梅の枝で打ち合い、長い巻物を広げるのが面白い。
セットが転換すると雪景色の庭。現実世界の寒波襲来とあいまって、寒さがひしひしと。もっとも床は、奥の千歳太夫・富助が熱い。
岩根(箕二郎、カシラは口が開く八汐)たちは仏像盗難の詮議と称し、赤姫姿が可憐な中将姫(簑助)をひったててくる。説経節をバックに、簑助さんが達者に遣っていて拍手。奴2人が割竹で、妙にリズミカルに姫を打ちすえる。残酷なんだけど、姫は襦袢に素足ながら品位を保ち、ひたすら読経を願う。御簾内から胡弓の音が重なり、奴も思わず涙。暖を取りつつ眺めていた岩根は業を煮やして自ら折檻し、姫が息絶えたと見るや、さっさと立ち去っちゃう。しかしこれは姫の演技。桐の谷と浮舟も岩根を騙すため、対立を演じていたのでした! 2人が姫を担ぎ出そうとすると、豊成(玉也)が声をかけ、立場上姫を助けられなかった苦衷を明かす。派手な節による父娘の別れで、幕切れとなりました。
休憩後には「壇浦兜軍記」阿古屋琴責めの段で畳み掛ける。昨年末に極めつけ玉三郎の歌舞伎版を観たけれど、文楽のほうが音楽性が高く、迫力にも勝る印象を受けた。床は渋い津駒太夫、朗々の織太夫ら5人、三味線は清介、ツレに清志郎、3曲で寛太郎が加わる。寛太郎は特に胡弓「相の山節」が思い切りよく、グルーヴがあって高水準です。
人形陣は主遣い全員が裃姿だ。まず障子が開いて重忠(玉助)登場。梯子段などでじっと曲に耳を澄ます我慢の難役だけど、知的でスケールが大きい。赤面の岩永は文司。やがて、お待ちかね阿古屋が連れ出される。思えば2012年の初役でも観た勘十郎が、華やかな肩衣を付け、次代を担う左の一輔、足の勘次郎も出遣いで。琴の爪を付ける仕草の繊細さ、打掛を広げる華やかさ。強い女性だなあ。水奴に勘介、玉路ら。全員決まって、大拍手で幕となりました~
ロビー売店では残念ながら、NPO法人人形浄瑠璃文楽座が活動停止とのことで、「外題づくし」など入った福袋を購入しました。

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