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マノン・レスコー

ローマ歌劇場2018年日本公演「マノン・レスコー」  2018年9月

巨匠ムーティが率いた2014年以来の来日で、最終日に足を運んだ。ソフィア・コッポラ演出「椿姫」が話題だったけれど、キアラ・ムーティ演出の「マノン・レスコー」を選択。オケのバランスがいまいちに感じたものの、プッチーニの甘い旋律と高水準の歌手、色彩を抑えた上品な演出を堪能した。指揮はトリノ出身のベテラン、ドナート・レンツェッティ。東京文化会館大ホール、やや上手寄りのS席で5万4000円。30分の休憩2回を挟み3時間半弱。
演目は2015年の新国立劇場、2016年のMETライブビューイングで聴いた、愚かな男女の転落の悲劇。お目当て、タイトロールのクリスティーネ・オポライス(メトでお馴染みのラトビアのソプラノ)はきめ細かな表現力があり、スラリとした美形だ。大人っぽく影がある分、問答無用のファム・ファタール要素は少なめで、宝石に拘泥した挙句、流刑地に送られちゃう虚無が前面に出る。2幕で兄に、自ら捨てたデ・グリューの消息を尋ねる「この柔らかなレースに包まれても」、幕切れの「ひとり寂しく捨てられて」などを繊細に、徐々に深く聴かせた。
対する騎士デ・グリューのグレゴリー・クンデ(イリノイ出身のベテランテノール)は太っちょながら張りのある声で、一途な男を造形して舞台を引き締めた。1幕でマノンに一目惚れする「見たこともない美しき人」などで大いに拍手を浴びてました。ほかに兄レスコーにアレッサンドロ・ルオンゴ(ピサ生まれのバリトン)、マノンを愛人にする財務大臣ジェロンテにマウリツィオ・ムラーロ(バス)、デ・グリューの友人エドモンドにアレッサンドロ・リベラトーレ(ローマのテノール)ら。
演出はとてもお洒落だ。フランス革命前夜の18世紀後半という時代設定に忠実に、貴族の館のマドリガル(歌曲)演奏シーンなど、古風な衣装とセットを使用。同時に全幕を通して、奥に向かって緩やかに高くなる床で、ラストを予感させる砂漠を表現。それは荒れ果てたマノンの精神にも見える。2幕でマノンが、オルゴール人形よろしく無機質に回る姿で、富を得ても感情のない暮らしを象徴するのも巧い。衣装などをシーンによって、白やブルーで統一した色使いに品があり、冒頭で人手で開けるたっぷりとした幕や、照明も効果的。宿屋2Fに立つマノンの横顔、浮かび上がる群衆、船着き場の深い陰影…
客席には多数の財界人、エコノミストの姿も。

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