« 2018年8月 | トップページ | 2018年10月 »

メタルマクベス

ONWARD presents 新感線☆RS「メタルマクベス」disc2 Produced by TBS  2018年9月

昨年に続き、テーマパーク感満載の360度シアターで、ヘビメタ活劇を楽しむ。宮藤官九郎作、いのうえひでのり演出の2006年初演作で、3作連続の2作目。客席が回る舞台転換と大胆な映像に加えて、今回はバイクでの疾走も加わり一段と派手だ。尾上松也らが歌い、踊り、走りまくる。松也ファンもいるのか、けっこう年齢層の高いIHIステージアラウンド東京、下手寄り前の方で1万3500円。休憩を挟んで4時間はちょっと長いかな。

物語は松岡和子版に基づくベタなシェイクスピアパロディで、しでかしてしまった小者夫妻の苦悩をガンガンと。2218年の荒廃した東京で、楽器ブランドをモチーフにした将軍ランダムスター(松也)が魔女(村木よし子ら)の予言と夫人(大原桜子)に背を押され、ESP国王レスポール(木場勝己)を暗殺して王位を手にする。転落に怯えて親友エクスプローラー(岡本健一)、先王側近グレコ(浅利陽介)の妻(高田聖子)らまで手にかけるものの、レスポールJr(原嘉孝)、フェルナンデス国のパール王(河野まさと)らに反撃されて、ミサイル爆発により城もろとも破滅する 魔女が予言としてバンド「メタルマクベス」の1981年のCDを渡し、合間に音楽業界のベタな転落物語が挟まる仕掛けだ。

松也が甘い声で舞台を牽引。なにしろケレンの本家だから、ヘビメタの意味不明な様式に違和感なくはまる。大量のスタッズや羽を着こなし、ヘッドバンギングはすっかり毛振りだし、見得やエビ反りも見事。荒事ってつくづくぶっ飛んでるな~と再認識。2月の「FUN HOME」がよかった大原も可愛く、力いっぱいの弾けぶり。大人の岡本は期待通りの色気を見せ、砂漠のツーリングシーンの爽快さが際立つ。ギャグも安定。浅利が意外に歌も殺陣も達者で存在感があり、木場のアコースティックギター弾き語りにもびっくり。

セットは暗くて「髑髏城」に比べ単調に感じたけど、立体CGのスケール感との融合が巧い。スクリーンを多用してキーワードや人物を念押ししたり、ラストは電飾ビカビカでのけぞらせたり。エックス初代ギタリストの髙井寿ら、バンドが生演奏で盛り上げる。美術は堀尾幸男、音楽は岡崎司、振付は川崎悦子。

ロビーの木村屋のキャラメルあんぱん、カレーパンが美味。

20180929_010

20180929_024


歌舞伎「金閣寺」「鬼揃紅葉狩」「河内山」

秀山祭九月大歌舞伎  2018年9月

播磨屋の練達の芸に加え、歌右衛門襲名を控えて病に倒れた福助が5年ぶりの復帰という話題もあって、昼の部に足を運んだ。歌舞伎座前方中央のいい席で1万8000円。休憩2回でたっぷり5時間弱。

幕開きはお馴染み「祇園祭礼信仰記 金閣寺」。文楽で2回、歌舞伎でも2016年雀右衛門襲名で鑑賞した、見どころ満載の演目だ。松緑の松永大膳は2枚目で、国崩しにしては優しい感じ。赤面の弟・鬼藤太、坂東亀蔵がいつもながら朗々として気持ちがいい。対する瓢箪柄の羽織の真柴久吉、梅玉はさすがにお年は隠せないものの、ノリ地のセリフ対決、そして井戸から碁笥を取り出すシーンと、古風さがいい風情だ。直信・幸四郎の極端ななよなよぶりに驚いた後、福助の長男・児太郎演じる雪姫が、桜の花びらがどさどさ散る名シーン「爪先鼠」で健闘。色気は今ひとつながら、はすに構えた決めポーズ、名刀に顔を映して髪を直す引っ込みまでを丁寧に。
大詰めはセリ下げで、ついに慶寿院尼・福助が登場。セリフもあって客席は涙涙だ。ラストは小田軍勢で、福助の甥にあたる橋之助と福之助をはじめ左団次の孫・男寅、松江さんの長男・玉太郎が若々しく揃って幕となりました。

ランチ休憩後は松羽目の舞踊「鬼揃紅葉狩」。萩原雪夫作、1960年初演だそうです。能楽「紅葉狩」をベースにした作品は、玉三郎版の舞踊や文楽で観たことがあるけれど、本作はそれと比べてもかなり賑やか。
舞台は戸隠山。囃子方を中央奥に、上下に常磐津、竹本が陣取る。平維茂(古風さが映える錦之助)と従者(廣太郎、隼人)が、更科の前(幸四郎、ちょっとごついかな)、侍女たち(ベテラン高麗蔵、可愛い米吉、大活躍の児太郎、澤村宗十郎の部屋子・宗之助ら)に誘われて、酒を酌み交わし舞を楽しむ。2舞扇が贅沢だ。男たちがうたた寝したところで間狂言となり、男神(玉太郎)、女神(東蔵)の祖父・孫コンビがきびきびと、主従に危難を警告。御簾内の大薩摩が盛り上げる。後半は維茂たちが山奥の古塚に至り、正体をあらわした鬼女、眷属との立ち回りに。侍女たちが全員鬼に変じるのが特徴だそうで、がんがん毛振りするのにびっくり。皆さん、がんばりました!

短い休憩の後、お待ちかね「天衣紛上野初花 河内山」。2015年の海老蔵が良かったけれど、本家・吉右衛門の貫禄、愛嬌の絶妙バランスと、緩急自在の黙阿弥節、ワキも充実していて大満足だ。
序幕・上州屋質見世から、木刀で50両借りようとする河内山の人を食った感じがチャーミング。「ヒジキに油揚げ」などのセリフが笑いを誘う。後家おまき(貫禄の魁春)が娘の危難を打ち明け、親類の和泉屋(粋な歌六)が前金100両を渡す。回り舞台で2幕目松江邸広間の場へ。トンデモ松江候(幸四郎、チャレンジしてます)とワルの大膳(吉右衛門の部屋子・吉之丞)対、浪路(米吉)、数馬(凛々しい歌昇)、家老・高木(歌六の弟・又五郎が安定)の関係を見せる。
続く書院の場で寛永寺の使僧に化けた河内山が乗り込んでくる。思い切りわざとらしく取り澄ましておいて、松江候を脅し、家臣にカネを要求。時計の音に驚くあたり、憎めないなあ。大詰め玄関先の場でホクロから正体がバレてからが真骨頂。開き直っていく七五調のスケール、権威をものともしない痛快さ。江戸を堪能しました!

20180923_010

20180923_031

マノン・レスコー

ローマ歌劇場2018年日本公演「マノン・レスコー」  2018年9月

巨匠ムーティが率いた2014年以来の来日で、最終日に足を運んだ。ソフィア・コッポラ演出「椿姫」が話題だったけれど、キアラ・ムーティ演出の「マノン・レスコー」を選択。オケのバランスがいまいちに感じたものの、プッチーニの甘い旋律と高水準の歌手、色彩を抑えた上品な演出を堪能した。指揮はトリノ出身のベテラン、ドナート・レンツェッティ。東京文化会館大ホール、やや上手寄りのS席で5万4000円。30分の休憩2回を挟み3時間半弱。
演目は2015年の新国立劇場、2016年のMETライブビューイングで聴いた、愚かな男女の転落の悲劇。お目当て、タイトロールのクリスティーネ・オポライス(メトでお馴染みのラトビアのソプラノ)はきめ細かな表現力があり、スラリとした美形だ。大人っぽく影がある分、問答無用のファム・ファタール要素は少なめで、宝石に拘泥した挙句、流刑地に送られちゃう虚無が前面に出る。2幕で兄に、自ら捨てたデ・グリューの消息を尋ねる「この柔らかなレースに包まれても」、幕切れの「ひとり寂しく捨てられて」などを繊細に、徐々に深く聴かせた。
対する騎士デ・グリューのグレゴリー・クンデ(イリノイ出身のベテランテノール)は太っちょながら張りのある声で、一途な男を造形して舞台を引き締めた。1幕でマノンに一目惚れする「見たこともない美しき人」などで大いに拍手を浴びてました。ほかに兄レスコーにアレッサンドロ・ルオンゴ(ピサ生まれのバリトン)、マノンを愛人にする財務大臣ジェロンテにマウリツィオ・ムラーロ(バス)、デ・グリューの友人エドモンドにアレッサンドロ・リベラトーレ(ローマのテノール)ら。
演出はとてもお洒落だ。フランス革命前夜の18世紀後半という時代設定に忠実に、貴族の館のマドリガル(歌曲)演奏シーンなど、古風な衣装とセットを使用。同時に全幕を通して、奥に向かって緩やかに高くなる床で、ラストを予感させる砂漠を表現。それは荒れ果てたマノンの精神にも見える。2幕でマノンが、オルゴール人形よろしく無機質に回る姿で、富を得ても感情のない暮らしを象徴するのも巧い。衣装などをシーンによって、白やブルーで統一した色使いに品があり、冒頭で人手で開けるたっぷりとした幕や、照明も効果的。宿屋2Fに立つマノンの横顔、浮かび上がる群衆、船着き場の深い陰影…
客席には多数の財界人、エコノミストの姿も。

20180922_004_2

20180922_006


文楽「良弁杉由来」「増補忠臣蔵」「夏祭浪花鑑」

第二〇四回文楽公演  2018年9月

4月の住太夫に続いて、開幕直前に三味線の人間国宝・鶴澤寛治が亡くなるという悲報があった9月東京公演。芸をつなぐ覚悟を噛み締めつつ。国立劇場小劇場で7000円。
第1部は渋めだが見ごたえのある演目が並んだ。いずれも明治期の作だそうです。前の方中央のいい席で、休憩3回を挟み4時間強。まず「南都二月堂良弁杉由来」は、大仏建立により初代東大寺別当となった良弁の伝説で、シンプルな親子の情が力強い。2010年に亡き文雀の渚の方で観た演目。玉助(当時は幸助)が、花見シーンの吹玉屋役でドヤ顔をしたのが懐かしい!
導入の志賀の里の段は睦太夫ら、ツレの琴・八雲は友之助、錦吾。茶摘み遊びの折、大鷲が光丸をさらう。上品な母・渚の方は手堅く和生。30年後となる桜の宮物狂いの段では津駒太夫らを勢いある藤蔵、寛太郎らの三味線が盛り上げる。変わり果てた渚の方が我に返り、故郷を目指す船で良弁僧正の噂を聞き、奈良へ向かう。
休憩に席でお寿司をつまみ、東大寺の段。靖太夫はとても聴きやすく、錦糸が安定。東大寺門前にたどり着いた渚の方が、通りかかったユーモラスな伴僧のアドバイスで、杉に書付を貼ることにする。
続いてダイナミックな舞台転換があり、堂々としたお堂と杉の大木が登場。クライマックスの二月堂の段は次代を支える千歳太夫、富助。トレードマークの熱演は抑えめで、なかなかいい風情だ。御簾内のメリヤス隊をバックに、供回りの奴が槍のアクロバットで拍手を浴び、大勢にかしづかれてお待ちかね、僧正(玉男)がやってくる。かしら「上人」はこの役専用だそうで、目や眉を動かす「からくり」が一切無く、所作も極端に少ない。難役だなあ。超俗というより、幼子にかえるような可愛さがにじみ、母子の再会、「そんならあなたが」「そもじが」で、涙を誘ってました。
休憩のあとは、銘々伝である「増補忠臣蔵」から本蔵下屋敷の段。こちらは2014年5月、まさに寛治の三味線で聴いた演目だ。通俗的といわれるらしいけど、わかりやすくテンポがある。今回は前が呂太夫・團七、切が咲太夫・燕三に琴の燕二郎と贅沢なりレーだ。
人形は中堅がしっかりと。若狭之助(玉助)が近習・伴左衛門(端敵役を手堅く玉佳)の悪巧みを暴きつつ、「へつらい武士」の悪評を招いた加古川本蔵(玉志)の苦渋の選択を許し、運命の山科へと送り出す。派手な見栄はなく、我慢の演技だけど、人物が大きくて玉助に似合う。別れに妹・三千歳姫(一輔)が琴「柴小舟」を奏で、虚無僧に身をやつした本蔵が尺八を重ねる。哀しいシーンを音楽で彩るのも文楽らしい演出ですね。
1週間後に第2部の「夏祭浪花鑑」を鑑賞。人気の夏狂言の古典とあって2012年に玉男(当時玉女)の団七で観たほか、歌舞伎では亡き勘三郎・芝翫(当時橋之助)・勘九郎(当時勘太郎)らのほか海老蔵・獅童ら、海老蔵・玉三郎らと3回観ている。今回は現在上演される場面をすべて並べたそうで、休憩3回でたっぷり4時間半。団七の勘十郎が、珍しいラストの立ち回りまで、庶民の任侠に狂気をはらんで大奮闘だ。全体がよく見える後方下手寄りの席で。
まず住吉鳥居前の段は、口が明朗な咲寿太夫・友之助、奥が睦太夫・勝平。油照りのイチ日、着替えてさっそうと再登場する団七の男ぶり、徳兵衛(文司)との達引と、止めに入る団七女房・お梶(清十郎)のきっぷの良さ、袖を取り交わす友情と、名シーンが続く。
前段に比べ、短い休憩を挟んだ内本町道具屋の段のシナリオは笑劇仕立てで、やや平板か。奥は三輪太夫・宗助。手代に身をやつした磯之丞(勘彌)の、浄瑠璃によくある2枚目像ながら、あまりのダメ男ぶりにイライラする。お嬢さまのお中(文昇)とねんごろになった挙げ句、番頭伝八、仲買弥市、義父の義平次(玉男)に騙され、弥市を手に掛けちゃう。続く道行妹背の走書が珍しい。織太夫、團吾らで。磯之丞・お中は伝八に追われ、首くくりを教わるふりをして殺害。人形ならではの表現だ。
食事休憩の後、いよいよ釣船三婦内の段。口は朗々と小住太夫・寛太郎、奥は呂勢太夫・安定の清治。恩ある磯之丞を逃がそうと、自ら顔を傷つける徳兵衛女房のお辰。蓑助が足はおぼつかないものの、さすがの色気で存在感を示す。さらに兄貴分の三婦(玉也)が自戒の数珠を切って喧嘩に至り、爆発の連続。団七・徳兵衛コンビが祭の晴れ姿、チェックの帷子で登場するのも格好いいなあ。
続く長町裏の段はお馴染み、だんじり囃子とメリヤスが暗い感情をかきたてる。織太夫、三輪太夫に清志郎。暗闇での団七と義平次の激しい立ち回り、義平次のガブ、団七の不動明王の彫り物と、視覚表現も鮮やかだ。華やかさから底なしの虚無へ。やはり名シーンです。
休憩後、東京では11年ぶりという田島町団七内の段を、文字久太夫・清介で実直に。悪人とはいえ舅殺しの罪を負い、真意を隠す団七と、胸を痛めるお梶、離縁を仕向けてなんとか逃がそうとする三婦、徳兵衛の思いが交錯する。もどかしい心理劇だ。ラストは一転、白昼の屋根の上の立ち回りで、派手に幕となりました。
ロビーでは北海道地震の義援金募集も。

20180909_001

20180909_004

20180909_006

20180909_010

講談「伊東喜兵衛の死」

第八回東雲講談  2018年9月

古典芸能好きの集まりで蝋燭講談の夕べ。お馴染み神田春陽が「四谷怪談」から初めて聴く「伊東喜兵衛の死」を読む。スパイラルで、夕暮れとシーンの進行に合わせて徐々に照明を落としていき、最後は和蝋燭だけに。うわー、怖い!
講談版の四谷怪談では、歌舞伎のうような忠臣蔵の外伝という設定はなく、実録小説「四谷雑談集」に近いのだそうです。伊右衛門が与力の喜兵衛と組んで妻のお岩を追い出し、その企みを知ったお岩は失踪。喜兵衛はなんとネズミに襲われちゃう。気味悪過ぎる。お岩さんが子年生まれにちなんだ「因果」なんですね。
本牧亭女将、清水孝子さんのトークもあり、充実した一夜でした。

サメと泳ぐ

関西テレビ放送開局60周年記念公演 サメと泳ぐ    2018年9月

ジョージ・ホアンの1994年公開映画をマイケル・レスリーが2008年に舞台化、手練れの千葉哲也がスタイリッシュに演出した。ハリウッドに生きる者が誰しも抱える激しい野心と露骨な裏表を、笑いをまじえつつシニカルに描いて、見ごたえがある。田中圭の頼りなさと色気が全開、田中哲司の巧さ、野波麻帆の存在感も際立ち、いいチームワークだ。翻訳は徐賀世子。
「おっさんず」効果なのか、田中圭ファンの女性が目立つ感じで、立ち見も多い世田谷パブリックシアター、中央あたりで8800円。休憩を挟んで約3時間。

脚本家志望のガイ(田中圭)はヒットメーカーの大物プロデューサー、バディ・アッカーマン(田中哲司)のアシスタントになり、芸術性の高い企画を持ち込んできたフリープロデューサー、ドーン(野波)と恋に落ちる。製作部門トップを狙うアッカーマンは、サイラス会長(千葉)に突然、良質な作品を求められ、ガイを使ってドーンの企画を奪いにかかり…。
田中圭は欲とプライド、恋と誠意の間を激しく揺れ動いて舞台を牽引。セリフのない間もモジモジ動く仕草が惹きつけ、自信を得たり自棄になったり、振れ幅も大きい。田中哲司は傲慢と俗物ぶりを存分に。ガイに反撃されるも、最後までしたたかで、大人っぽさに説得力がある。「人生は、映画じゃない」というセリフが、現実を突きつける。ほかに先輩アシスタントと脚本家の2役で石田佳央ら。

メタリックな2階建てセットで、上手がアッカーマンのオフィス、下手がドーンの部屋。奥から人が出入りする中央通路を、鮮やかな青や赤で照らすなど、照明にメリハリが効いていてお洒落だ。美術は石原敬、照明は松本大介。中央の長テーブルに置いた卓上ベルで場面を切り替えるのも巧い。アッカーマンがコレクションしているゼンマイ仕掛けのおもちゃが、あがき続ける道を選んだ者の虚無を印象づける。
客席には白井晃さんらしき姿も。

20180908_004

サマータイムマシン・ワンスモア

ヨーロッパ企画20周年ツアー「サマータイムマシン・ワンスモア」  2018年9月

2001年初演で映画化もされた、劇団代表作コメディの後日談を観る。上田誠作・演出。ちゃちいタイムマシンの脱力感、時間を行ったり来たりするパズルの精緻さ、そして徹頭徹尾くだらなくも仲のいい、文系部活の雰囲気にニヤニヤしちゃう。男性が目立つ本多劇場の、下手寄り後ろの方で4500円。劇団史上初という休憩をはさんで3時間近いけど、長くは感じない。
物語はあの夏の日、ごちゃごちゃしたSF研のラストシーンから始まる。そして15年後。同窓会で彼らが久々に部室を訪れ、現役生をからかっていると、なんとあのマシン、そしてトボケたおかっぱの未来人・田村(本多力)がやってくる。しかも今度はマシンが3台に!
そうなると乗り込まずにはいられない。目指すは相変わらず、取るに足らないこと。歴史を変えちゃいけないからね。駄目になっちゃった自信作のフィルムを取り返すとか、学園祭で見損なった謎のレディー・ガガそっくりさんを見るとか。繰り広げられる小さな失敗と取り繕い。サバイバルはパワーアップし、「平成最後の年」ネタも押さえてます。いやー、笑った。
複雑なパラレルワールドで、過去の自分と現在の自分が早着替えで出入りするのが見事。大学敷地のショッピングモール化計画と、小暮(酒井善史)が地味に研究してきた鰻の養殖が絡み合い、ラストは柴田(早織)の恋の伏線まできれいに回収される。お馴染み、リモコンのオチがお洒落だ。
オーラ皆無の普通人の群像が微笑ましく、ささやかな希望に夢中になれることの愛おしさに、説得力がある。しっかり者・木暮の酒井が軸となり、モノクロにこだわるカメラ部・照屋の小太り角田貴志がいいトボケぶり。現役陣ではカメラ女子・箕輪の藤谷理子がキビキビと動き、対照的にSF研でくすぶってスイッチをしていた聡太・城築創のオタク感もチャーミングだ。関西弁のビジネスマン・蛭谷の岡嶋秀昭はひとり大人っぽいかな。
ロビーに掲示された大泉洋らの、20周年に贈る言葉がとても温かいのも、劇団の個性なんでしょうね~

20180902_005

権太楼「饅頭怖い」「唐茄子屋政談」「反対俥」「火焔太鼓」「芝浜」

大手町独演会「ザ・柳家権太楼 其の五」~徹頭徹尾・権太楼噺~  2018年9月

爆笑派のベテラン、柳家権太楼の独演会。年配男性が目立つ、よみうり大手町ホールのやや後ろ寄りで4000円。惜しげないトリネタづくしで、中入りをはさみ3時間半と大奮闘だ。
前座は柳家寿伴(小さんの孫弟子、三寿の弟子)がはきはきと「饅頭怖い」。続いていきなり権太楼が登場。「電車が止まっているらしい、事情はわかってますよ」と遅れて入る聴衆を見守り、「さん光が上がるはずだったけど、着物を忘れて」と、びっくりのハプニングを語って「唐茄子屋政談」。三遊亭萬窓、林家正蔵のリレーで聴いたことがある噺だが、これがもう、たっぷりだ。なにしろ通りすがりの男が格好いい。カボチャを担いでへばった若旦那を見かねて、友達と喧嘩してまで売りさばいてくれる。そして帰り道、勘当されるほど通った吉原を眺める畦道で、ひとり売り声を練習するシーンの清々しさ。後半は長屋の母子を助けて、いい噺だなあ。
中入り後、開口一番のはずの柳家さん光(権太楼の弟子の二つ目)が「本当は高座があるって思ってなくて」と説明しつつ、前に彦いちで聴いた「反対俥」。ちょっとラフだったかな?
再び権太楼で、近著にちなんだトーク「落語家魂・外伝」。粋な名人への憧れ、座布団に坐るまでの振る舞いを大事にすること、着物に対するこだわり、談志に高座を頼んだときの思い出などなど。貴重なエピソードの後、するっと「火焔太鼓」へ。橘家圓太郎で聴いたことがある。ことのほか勢いがよくて、笑った笑った。道具屋のカミさん、商売ヘタな夫と喧嘩しながらも、お金の数え方が同じなのが、とても愛らしい。この人が描くオバサンは味がある。
短い「ちょっと一服」を挟んで、トリはもちろん権太楼の、夫婦ものつながりで「芝浜」。しみじみと、しんと張り詰めて。聴いてるほうもちょっと疲れたけど、振り幅の大きい、充実した会でした。

20180901_001

20180901_004

« 2018年8月 | トップページ | 2018年10月 »