« 小澤アカデミー モーツァルト「ディヴェルティメントK.136」ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第16番」 | トップページ | 落語「あくび指南」「大安売り」「盃の殿様」「任侠流山動物園」 »

MAKOTO

阿佐ヶ谷スパイダース「MAKOTO」  2018年8月
作・演出長塚圭史。1996年から活動していた演劇プロデュースユニットを昨年、劇団に衣替えし、オーディションメンバーも加えた第1回公演。五輪に向けて急速に変わりゆく東京を素材に、忘れるということの苦しさ、重みを描く。下世話な笑いをまぶしつつ、暴走するイメージが面白い。新旧のファンが集まった感じの吉祥寺シアター、中段下手端で5000円。休憩無しの2時間15分。
蒸し暑い夏の朝。三郎(長塚)が妻(志甫真弓子)と娘(木村美月)を連れ、売れない漫画家の義兄・水谷(中村まこと)の部屋を訪ねる。水谷の妻・市子の死は医療事故で、訴訟すべきとけしかけるが、水谷とは会えずに、隣の男(森一生)、隣の女(李千鶴)と無為な時間を過ごす。
肝心の水谷は悲嘆から逃れるべく、最愛の妻をなんとか忘れようと、警備員仲間の金髪・入口(坂本慶介)や栗田さん(中山祐一朗)、妻を手術した怪しい医師・森本(伊達暁)、その飲んだくれ妻(ちすん)、息子(大久保祥太郎)らを巻き込んで、無茶をする。そのうち妻の服を燃やすと、破壊のエネルギーが発散されると気づき…
街で新しい建物に通りかかったとき、以前その場に何が建っていたか忘れていて愕然とすることがある。観劇しながらそんな感覚に襲われた。1964年の東京五輪時に整備されたお化けトンネル(上に徳川紀州家の墓所がある千駄ヶ谷トンネル)あたりや国立競技場の変貌と、開発に取り残された西池袋の、ドア横に2槽式洗濯機がある寂れたアパートとの対比が鮮やかだ。幕切れに降り注ぐソフトボールの浮遊感が気持ちいい。
忘れることは苦しく切ないけれど、大事にしている記憶には都合のいい嘘も紛れ込んでいる。繰り返される夫婦の裏切りの気配に、そんな苦みも漂う。人物が多くてエピソード過多気味だし、水谷の苦悶の繰り返しに少々ダレ気味の時間帯もあったけど、今ならではの都市と家族の物語といえそう。
手練の中村が、相変わらずパワフルな怪演。手当たり次第、妻の衣装を着せて迫っちゃって気色悪さ満点だ。中山はヨーデルが巧くてびっくり。一方、いい奴の坂本(岩松さん「家庭内失踪」に出演)、飄々と不気味な森、透明感がある木村(1994年生まれ)ら若手も健闘。
ラッキーにも終演後にバックステージツアーがあり、舞台監督の福澤諭志さん、大久保クン、途中からは長塚さんも加わってセットを解説。アパートも道路も妻の服も、わざわざ写真をプリントして使っていて、その技術力と、過去を閉じ込める写真というメディアの意味合いが面白かった。
長塚さんは開演前に廊下で誘導しているし、ツアー後は俳優がグッズを売っているし、手作り感覚が劇団ぽいなあ。客席には
蓬莱竜太さんらしき姿も。

20180819_010

« 小澤アカデミー モーツァルト「ディヴェルティメントK.136」ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第16番」 | トップページ | 落語「あくび指南」「大安売り」「盃の殿様」「任侠流山動物園」 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3458/67074347

この記事へのトラックバック一覧です: MAKOTO:

« 小澤アカデミー モーツァルト「ディヴェルティメントK.136」ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第16番」 | トップページ | 落語「あくび指南」「大安売り」「盃の殿様」「任侠流山動物園」 »