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舞囃子「三番叟」能「鷹姫」

狂言劇場特別版  2018年7月

劇場の特設能舞台で古典を新しく見せるシリーズ。芸術監督・野村萬斎が知的に演出する。萬斎ファンらしき女性グループが目立つ世田谷パブリックシアター、なんと前から2列め中央で8000円。休憩を挟み2時間弱。
暗い舞台に短い四本の柱を据え、左右に橋、後方に松の絵と注連縄。上手から笛と太鼓、下手からシテ野村裕基が紋付袴、直面で登場して、舞囃子「三番叟」揉の段、鈴の段。いつもながらリズミカルで、繰り返しが多い囃子方がクワイヤの陶酔につながる。裕基は萬斎さんの息子さんで、もう18歳。急速に大人っぽくなってきたけど、声の力や姿勢の美しさはまだまだかなあ。
休憩後に眼目の新作能「鷹姫」。アイルランドのノーベル賞作家・詩人イェイツがフェノロサの能に関する遺稿に触発されて書いたという、戯曲「鷹の井戸」(1916年ロンドン初演)を、いわば逆輸入した演目だ。能楽研究家・横道萬里雄作で1967年初演、チャレンジャー梅若実さんらが手がけてきた。今回は萬斎さん演出版です。
舞台は絶海の孤島で、中央手前に涸れ井戸。顔の形の岩がごろごろしているのが演劇的で、まず驚く。地謡・囃子の面々も鼻まで覆う仮面で岩に扮して、後方左右に広がってコロスを繰り広げる。音楽的だなあ。
不老長寿の泉を鷹姫(片山九郎右衛門)が守っていて、傍らで杖にすがる老人(大槻文蔵)が水が湧く瞬間を待ち続けている。そこへ綺羅びやかな衣装で、王子・空賦麟(くうふりん=ケルト神話の英雄クー・フーリン、萬斎)が登場。さすがブレがなくて格好いい!
老人は何十年も水が湧くのを待ってる、鷹に魅入られるな、と語る。なんと転がる岩は同じように、水を得られなかった者たちが変じた姿なのです…
座ったままじっと動かない鷹の緊張感が凄い。一転、鷹が羽ばたくと、岩の輪唱のなか、ついに井戸に照明があたってスモークが立ち上る。ところが王子は気を失っちゃって、鷹は水を飲み干して後方へと飛び去る。暗転後、年老いた王子が座り込んでいる。
人を突き動かす命への希求と、決して手が届かない絶対的な空虚。古今東西共通のモチーフなんですねえ。

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