« 図書館的人生Vol.5 襲ってくるもの | トップページ | 市ケ尾の坂 »

フィデリオ

2017/2018シーズンオペラ 開場20周年記念特別公演 フィデリオ  2018年6月

芸術監督4年の集大成で飯守泰次郎がタクトを振り、ワーグナーのひ孫、バイロイト音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナーが演出した話題の新制作。ラストの衝撃的かつ皮肉などんでん返しに、しばらく聴衆のざわめきがおさまらない、新国立劇場としては異例の展開だ。これがムジークテアター(音楽劇)というものか。
飯守リングを並走しきったステファン・グールド(アメリカのテノール)はじめ、歌手は高水準で、いろんな意味で鮮烈な舞台でした~ オケは東京交響楽団。男性客が目立つ新国立劇場オペラハウス、中央のいい席で2万4300円。休憩1回で3時間弱。
べーとーえ「レオノーレ」序曲第3番
「レオノーレ」序曲第3番
ベートーベン唯一のオペラ「フィデリオ」は、政敵に夫フロレスタン(グールド)を不当投獄された妻レオノーレ(ドイツのソプラノリカルダ・メルベート)が、男装して看守フィデリオと名乗り、決死の救出に向かうという、力強い愛と自由の物語だ。個人的には2008年ウィーン国立歌劇場の来日、小澤征爾指揮で聴き、2幕2場前の壮大な「レオノーレ序曲第三番」に喝采した記憶がある。
ところが今回は、序曲を聴くどころじゃない。なにしろ演奏の間、刑務所長ドン・ピツァロ(新国立初登場の長身のバリトン)が再会を果たした夫妻を刺し、地下牢の入り口をブロックで封鎖しちゃうシーンが展開するのだもの。やられました~
歌手陣ではなんといってもグールド。2幕で「神よ、ここはなんと暗いのか」を歌い始めると、その朗々ぶりで一気に次元が切り替わる。1幕では歌わないのに、ずっと地下牢にいて、壁にレオノーレの絵を描いていたし、幕切れは夫婦で霊的な存在になっての絶唱。フィデリオに一目惚れするマルツェリーネの石橋栄実(大阪音楽大教授のソプラノ)も、高音がよく響いて可憐で、存在感があった。看守長ロッコにお馴染み妻屋秀和(バス)、囚人1に片寄純也(二期会のテノール)。
セットはプロセニアム(開口部)いっぱいを使った、2階建て(1部3階建て)の監獄で、さらにセット全体がせり上がって、下層に地下牢が現れる大掛かりなもの。それぞれの場所に立つ歌手は歌いにくいだろうなあ。無機質なセメントと青銅に、マルツェリーネの周囲だけが明るい。肖像画にスポットがあたったり、踊るマルツェリーネの人影が地下牢に投影するなど、照明が登場人物の屈託を表現して巧い。光と闇を強調するのは「新バイロイト様式」だそうです。
ドラマトゥルクのダニエル・ウェーバー(バイロイト制作部長)、美術のマルク・レーラーらカタリーナ組なのかな。
入り口前に売店が充実し、ロビーには飯守監督の軌跡をたどるパネル。2014年開幕の大作「パルジファル」、洒落た演出の「イェヌーファ」、フォークトさまの「ローエングリン」… お疲れ様でした! 尾崎元規理事長の姿も。

20180602_011

20180602_015

« 図書館的人生Vol.5 襲ってくるもの | トップページ | 市ケ尾の坂 »

オペラ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3458/66788951

この記事へのトラックバック一覧です: フィデリオ:

« 図書館的人生Vol.5 襲ってくるもの | トップページ | 市ケ尾の坂 »