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夢の裂け目

新国立劇場開場二十周年記念公演 夢の裂け目  2018年6月

当時芸術監督だった演出の栗山民也が井上ひさしに依頼し、2001年に初演した「東京裁判3部作」の1作目。たっぷりの笑いと軽妙な音楽のなかに、庶民に戦争責任はないのか、を問う秀作だ。社会と歴史を語り続けた作家の覚悟と自負が、胸に迫る。
しゃべる男・段田安則をはじめとして、俳優陣の歌や振りも達者でたくましい。年配男性が目立つ新国立劇場小劇場、後ろのほう中央で6480円。休憩を挟み3時間。
ときは昭和21年。根津の紙芝居屋・天声(段田)は突然、東京裁判の検察側の証人を命じられる。法廷で戦争宣伝の紙芝居を実演し、首尾よく東条英機らを告発したものの、裁判が実は、戦犯に責任を押し付ける、勝者敗者納得づくの茶番だと語り始める。
カーテンコールの「マック・ザ・ナイフ」など、全編を彩るクルト・ヴァイル「三文オペラ」のナンバーが郷愁を誘う。「劇場は夢、その夢の裂け目を考えるところ」。名曲だなあ(音楽は「ひょっこりひょうたん島」などの宇野誠一郎)。天声が時代の「骨組み」に思い至るシーンで、星がまたたくセットも、素朴ながら洒落ている(美術は石井強司)。
段田が小ずるくて、だからこそ騙されまいともがく必死さを表現していて魅力的。語りの名調子もいい。大詰めで、無力であっても生き抜くことを、とつとつと説く絵描きの木場勝己が、抜群の説得力でジンとさせる。
賢い娘・唯月ふうか(ピーターパンなど)は声がよく通って愛くるしい。素っ頓狂な復員兵の玉置玲央、元柳橋の芸妓・高田聖子が個性を発揮して安定。このほか妹に吉沢梨絵(四季)、映画館のドラ息子に佐藤誓、元学者の闇屋に長身・上山竜治、堅苦しいGHQ職員に保坂知寿(四季)。
舞台前方の奈落で、キーボードの朴勝哲らバンドが演奏し、ちょっと演技に参加していた。俳優は一部マイクを使用。

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