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團菊祭五月大歌舞伎 昼の部 2018年5月
爽やかな初夏の陽気のGW最終日は、十二世市川團十郎五年祭と銘打った大歌舞伎に足を運んだ。昼の部は海老蔵オンステージで、エンタメに徹した荒事「雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまさくら)」の5役をたっぷりと。
2014年に同じ演目を観た時は、若さが先に立ったけれど、今回は色気と愛嬌が際立って、スケールアップした印象だ。スターだなあ。掛け声、拍手も多く期待通りの盛り上がり。上手寄り中段あたりで1万8000円。休憩3回で4時間半強。
幕開きは5役の写真を背景に、海老蔵の口上。成田山開基1080年、2世團十郎生誕330年といった由来から、自分の役を解説し、「殺し、殺され」と笑わせたあたりで、「まだか、まだか」の声がかかり、セリで下りていく。
発端・深草山山中の場は早雲王子(海老蔵)が、皇位を狙うワルさをアピール。続く序幕・大内の場では、善人側の小野春道(友右衛門)、関白基経(上品な錦之助)らが御所で雨乞いに苦心するシーンで、安倍清行(海老蔵2役目)と早雲王子を早替りで見せる。陰陽師の清行は頼られているのに、なんと100歳でやる気ゼロ。そのくせ好色で、早口言葉で口説いちゃう、という摩訶不思議なキャラだ。飄々と、コミカルさを存分に。幕と幕をつないでいく文屋豊秀の松也が、きびきびと声が通っていい。前回は愛之助でしたね。
休憩で予約しておいた、めでたい焼きを頂き、「毛抜」にあたる二幕目・小野春道館の場。文屋家家老・粂寺弾正(海老蔵3役目)がまた、若衆(児太郎)、腰元(贅沢に雀右衛門)を口説いちゃうお茶目ぶりを発揮。しかし後半は、悪党(市蔵)をやり込めて雨乞いに必須の重宝・「ことわりや」の短冊を取り戻し、髪が逆立つという姫(梅丸)の奇病のトリックを暴き、さらにワルの執権(ベテラン團蔵)を切り捨てて、悠々と花道を引き上げる。見栄もたっぷり、メリハリが効いていて、海老模様の着物も格好いい。姫の梅丸が顔が小さくて可愛く、若君の廣松(友右衛門の次男)が爽やかだ。海老蔵の部屋子・市川福之助ちゃんも小姓でちらりと。
ランチ休憩で席でお弁当をつつき、コーヒーを飲みつつ「鳴神」にあたる三幕目。木の島明神境内の場で、松也と清行弟子(新十郎)が客席をウロウロするサービス! 巫女の匂いにつたれた清行がすっぽんから登場する。
続く北山岩屋の場は、弟子(ベテラン齊入、市蔵)のチャリ場の後、いよいよ鳴神上人(海老蔵4役目)が登場。雲の絶間姫(菊之助)に誘惑されちゃう際どいやり取りがあり、ついには還俗して海老蔵と名乗ると言い出す。菊之助がぽっちゃりながら、芯の強さがよく出ていて、いい。こちらは前回、玉三郎で観たんだなあ。一方の海老蔵は、純粋さを軸に引き気味に受ける。姫がまんまと注連縄を切って雨をふらせると、上人は一転、毬栗の鬘、ぶっ返りで憤怒の表情となり、所化たちを投げ飛ばして、飛び六方で引っ込んでいく。
そのまま大詰になだれ込み、まず大内塀外の場は巫女と百姓たちの賑やかな神楽、そして豊秀らの立ち回り。幕が落とされると、朱雀門王子最期の場。ド派手な朱色の門に紅葉が鮮やかだ。セリから上がってきた王子は、四天と激しいアクションを繰り広げる。これでもか、というトンボの連続、梯子による三枡の紋、そして狭い花道で梯子に上ってのぶっ返り等々の末、魔界に落ちていく。怒涛の展開です。
お約束の大薩摩を挟み、ラスト「不動」の不動明王降臨の場。スモークとライトの明滅のなか、不動明王(海老蔵5役目)が宙に浮いて幕となりました~
短い休憩の間に、2階ロビーの成田山新勝寺出開帳で祀られた不動尊にお参りし、お楽しみ舞踊「女伊達」。長唄囃子連中が舞台後方に並び、桜が満開の新吉原。女伊達の時蔵が、男伊達の種之助、橋之助を相手に、尺八や手桶を使う面白い立ち回り。貫禄たっぷりで打ち出しました。
あっけらかんと楽しかった! ちなみに地下広場の大提灯は2代目になったそうです。