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歌舞伎「絵本合法衢」

四月大歌舞伎  夜の部  2018年月

「片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候」と銘打った「絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)立場(たてば)の太平次」に足を運んだ。四世鶴屋南北による、身も蓋もない悪漢もの。スピーディーな筋運びと、74歳にして2役出づっぱり、監修も務めるニザさまの「悪の華」ぶりで楽しめた。歌舞伎座前のほう、中央のいい席で1万8000円。休憩3回で4時間弱。

メーンストーリーは「時代」で、近江・多賀家の乗っ取りを企む左枝大学之助(仁左衛門)が繰り広げる悪事と、忠臣による仇討ち劇だ。大学之助は野望のためというより、気に入らないと衝動的に子供でも手にかけちゃって、それを楽しんでいるというトンデモキャラだ。
これに手下である太平次(仁左衛門)の「世話」ストーリーがからむ。こちらもタガが外れた無頼漢で、金欲しさと口封じのため、安直に殺戮を繰り返す。もう手当たり次第。
善悪十人以上が次々落命していき、陰惨なのに笑いもある。退廃的なビジュアルは錦絵のよう。モラルと理屈をあっさり振り切り、偶然の出会いなどご都合主義も満載で、実に歌舞伎らしい。

序幕・多賀家水門口の場で、大学之助一味が本家の重宝「霊亀の香炉」を盗み出す。お約束の振りですね。大学之助が花道の出で、深編み笠を取るシーンが美しくもぞっとさせる。多賀領鷹野の場では大学之助が、道具商・田代屋の与兵衛(錦之助)と共に通りかかった、許嫁・お亀(孝太郎)に横恋慕。錦之助の折り目正しさがいい。
続く多賀家陣屋の場で、大学之助が本家の忠臣・高橋瀬左衛門(彌十郎)を騙し討にし、重宝「菅家の一軸」まで手に入れ、扇の陰から舌を出す。怖い!

短い休憩を挟んで二幕目・四条河原の場。色男の太平次に惚れている蛇使い・うんざりお松(時蔵)が、田代屋に質入れされた香炉を取り戻そうと企む。時蔵さんの色気と腹の太さが出色だ。「悪婆」の原型だそうです。昼は政岡で、大活躍だし。
今出川道具屋の場で、お松が田代屋で強請りを仕掛けるが失敗。与兵衛とお亀は義母おりよ(萬次郎)のはからいで、香炉を持って兄・瀬左衛門の仇討ちに出立し、難を逃れる。太平次は毒酒でおりよを殺して金を奪う。残忍な悪党だけど愛嬌も漂うのが、ニザさまらしい。
さらに妙覚寺裏手の場で、なんと邪魔になったお松を殺め、井戸に投げ込んじゃう。三日月と、派手な女の着物が妖しい。太平次と女房お道(吉弥)、与兵衛とお亀、瀬左衛門の弟・弥十郎(彌十郎が2役)と妻・皐月(時蔵が2役)の3組による、様式的なだんまりで幕。

食事休憩の後、3幕目。和州倉狩峠の場で大学之助一味が与兵衛とお亀を追っている。倉狩峠一つ家の場は大和国にある旅人の休息所「立場」で、人間関係が複雑に交錯。主人の太平次が、旅のお米(梅丸)を売り飛ばそうと企むところへ、持病に苦しむ与兵衛とお亀が到着。お亀は夫を手引きしようと、健気にも妾となって大学之助の屋敷に向かい、与兵衛は峠へ逃げていく。また、お米を探して高橋家に仕える夫の孫七(坂東亀蔵)がやってくる。声の通る亀蔵(楽善の次男)がりりしく、梅丸(梅玉の部屋子)もなかなか。
続く倉狩峠古宮の場では与兵衛を狙う太平次が、とめようとする善人の女房・お道を踏みつけた挙げ句、元の一つ家の場に戻って孫七・お米をなぶり殺しにしちゃう。残忍なんだけど、独特の中腰の構え、彫り物姿の見栄が決まって、格好いい。

短い休憩を挟んで大詰。合法庵室の場は天王寺近く。僧・合法が実は次兄の弥十郎と知らず、深傷を追った末弟の与兵衛が、庵室に身を寄ている。敵の大学之助が現れ、太平次の死が明かされるものの、与兵衛は仇討ちに失敗し、「一軸」「香炉」も奪われて無念の切腹。弥十郎と涙の別れとなる。
そして巨大な仏像が登場する閻魔堂の場で、ついに弥十郎・皐月が、瀬左衛門が討たれた槍の穂先を使って本懐を果たす。カーテンコールのようにニザさまらが頭を下げて幕。面白かったです!

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