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TERROR テロ

TERROR テロ    2018年1月

7万人の命を救うために、164人を犠牲にした男は有罪か無罪か? 決めるのは観客。ミステリー連作「犯罪」がとても良かったフェルディナント・フォン・シーラッハの、知的で緊張感ある法廷劇だ。酒寄進一訳、最近では「謎の変奏曲」が秀逸だった森新太郎の演出で。
パルコと兵庫県立芸術文化センターの共同製作で、演劇ファンが集まった感じの紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA、上手寄りかなり前方で7800円。休憩2回を挟んで3時間。

観客は「参審員」として法廷に参加し、判断を迫られる。入り口でカードが配られ、2幕終了後に有罪、無罪の箱に投票、その評決に応じて終幕が変化する仕掛けだ。
ベルリンの刑事弁護士でもある作家が提示する設定は、実に重い。テロリストが民間機をジャックして、サッカー場への墜落を宣言。独断で機を撃墜し、大勢のサッカー観戦客を救う代わりに乗員乗客を死に追いやった空軍少佐コッホ(松下洸平)が殺人罪に問われる。観客に向かって、老獪な弁護士(橋爪功)はテロの脅威と、超法規的措置の必要を説き、対する検察官(神野三鈴)は厳然と、命を数で天秤にかけることの罪、人間の尊厳を主張する。
コッホの上司(堀部圭亮)に、暗黙の了承があったのか。サッカー場からの大規模避難や、被害者遺族(前田亜季)が叫ぶような乗員乗客によるテロリスト制圧という可能性はあったのか。
どれも、簡単に答えられるような問いではない。机と椅子数個のみのシンプルなセットで、今井朋彦の裁判長があくまで冷静に審議を進めるだけに、観る者の思考を追い込むような言葉のバトルが際立つ。美術は「足跡姫」などでお馴染み堀尾幸男。

初演の2015年はパリのシャルリー・エブド襲撃事件が、世界に大きな衝撃を与え、その後も各地で理不尽な事件が続いている。現実は厳しい。プログラムには18年1月6日現在の上演記録が掲載されており、それによると観客投票の61%が無罪。多数決の結果では、欧米や中東、オーストラリアの上演で無罪が多いのに対し、日本(2016年公演)や中国では有罪が目立つ。これはテロの不安との距離感なのか。この比率は今後、どうなっていくのか…

2013年からシーラッハの朗読を手がける橋爪が、さすがの練度。凛とした神野と、いい対照だ。抑制から感情の爆発に至る前田が熱演。
客席には山田洋次さんらしき姿も。

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