黒蜥蜴
黒蜥蜴 2018年1月
江戸川乱歩原作、三島由紀夫による歌うように流麗な戯曲を、「ETERNAL CHIKAMATSU」などのデヴィッド・ルヴォーが演出する話題の舞台。2011年「猟銃」の印象が未だ強烈な中谷美紀が、宝塚チックなキラキラ衣装で「グロテスク・ビューティー」を演じきる。日生劇場、前の方下手端で1万2500円。休憩を挟んで3時間強。
宝石商・岩瀬(たかお鷹)が持つ「エヂプトの星」を狙う盗賊・黒蜥蜴(中谷)は、大阪中之島のホテルから令嬢・早苗(相楽樹)をさらう。名探偵・明智小五郎(井上芳雄)が阻止するものの、黒蜥蜴は岩瀬邸から再び早苗をソファに詰めて誘拐し、宝石との交換を要求。東京タワーでの受け渡しで、まんまと両方を奪い去り、逃走する船中で追ってきた明智を海に投げ込む。アジトに着き、宝石のほか怖ろしい美男美女の「コレクション」を見せる黒蜥蜴。令嬢もあわや、というところで変装していた明智が現れ、黒蜥蜴は自害する…
モラルを超えて究極の美を求める孤独な女賊と、犯罪に魅入られた探偵が運命的に惹かれ合うという、耽美と倒錯の三島ワールド。難解だけどイメージ豊か、きらびやかな比喩や、歌舞伎の割ゼリフ風などが耳に心地よい。
中谷が凛とした透明感で舞台を牽引。美しくも中性的な印象だ。美輪明宏や玉三郎が演じた役にチャレンジする姿勢もあっぱれ。ちょっと声が不調だったようだけど。対する井上もすらりとしていて、色気よりも悩めるハムレット風の造形。黒蜥蜴のしもべ雨宮役の成河と、実は替え玉で、とハスッパに転じちゃう相楽がコミカルで、いい対比だ。たかおの俗物ぶりに皮肉が効いている。
演出は青っぽい照明など、現実味が薄くて主演2人に焦点を絞った感じ。中谷のひたすらゴージャスな衣装が、乙女心をくすぐる。精緻な舞台転換と、黒蜥蜴に爬虫類のようにまとわりつくダンサー2人が面白い。ただいつもながらこの劇場は広すぎて、拡散するかなあ~ 美術は「謎の変奏曲」などお馴染みの伊藤雅子。衣装は前田文子。


















