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「鯉つかみ」「奥州安達原」「雪暮夜入谷畔道」

吉例顔見世大歌舞伎 昼の部 2017年11月

吉右衛門、菊五郎という大看板の、まさに至芸を堪能。ワキもそれぞれはまり役で充実した舞台だ。襲名を控えた染五郎のケレン満載も楽しく、歌舞伎見物を満喫する。歌舞伎座中央のいい席で1万8000円。休憩2回を挟み4時間半。

幕開けは「湧昇水鯉滝(わきのぼるみずにこいたき)鯉つかみ」で染五郎が大暴れ。2011年久々に演じた演目で、2015年にはラスベガス・ホテルベラージオの噴水でチームラボと共演した。夏芝居だけど、染五郎ラストにあえて若々しい娯楽作をもってきた気概に共感。
物語は幻想的な琵琶湖の蛍狩りシーンから。釣家の息女・小桜姫(児太郎)の舟が流され、竹生島の近くで恋しい許婚の志賀之助(染五郎)に救われる。これが実は釣家を恨む鯉の精。長唄チームと浄瑠璃チームで贅沢に。
館で2人の志賀之助が登場しちゃうドタバタ。家老は友右衛門。障子に映る影で偽物の正体が露見すると、そこからはもう、怒涛のアクションだ。染五郎の宙乗り、偽物と本物の志賀之助を目まぐるしく演じる早替り、そして大津布引の滝で、本水をバシャバシャまき散らす大立ち回り! 鯉の着ぐるみの役者さんも大変だし、染五郎も見事に滑っちゃったりして、奮闘に大きな拍手。

ランチ休憩の後は眼目の「奥州安達原 環宮(たまきのみや)明御殿の場」。安倍一族残党の貞任・宗任兄弟が再興を目指し、周囲を不幸にしちゃう。文楽で勘十郎さんの袖萩が圧巻だった演目だ。
前半は降りしきる雪のなか、瞽女(ごぜ)に零落した袖萩(雀右衛門)が祭文に託して、父・直方(渋い歌六)に不孝を詫びる。雀右衛門さん、哀れさがはまっていて、三味線の生演奏もばっちり。母に着物を着せかける娘お君(安藤然)が、可愛く名演だ。娘に冷たくしなければならない母・浜夕(東蔵)も切ない。
後半は父娘自害の悲劇から、勅使に化けていた夫・貞任(吉右衛門)が、陣鉦(じんがね)太鼓の音でいよいよ正体を垣間見せる。さらに衣冠束帯の引き抜きで金ぴかの武将姿に転じ、豪壮な「見顕し」へ。吉右衛門さん、さすがに袖萩と2役というわけにはいかないし、声は細った感じだけど、変わらず重厚で、スケールが大きい。一転、涙の親子の対面、赤旗を振り出しての見得と、振幅も見せる。敵ながら凛々しい義家(錦之助)が温情を示し、宗任(荒々しい又五郎)と共に戦場での再会を約す。格好良かった~

休憩を挟んで、がらりと世話にくだけた黙阿弥作「雪暮夜入谷畔道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)直侍」を、極付の音羽屋で。まずは雪の入谷。蕎麦屋で捕手2人がわざともぐもぐ食べた後、安御家人の直次郎(菊五郎)が登場。手拭の額をとがらし、尻端折り。周囲を気遣いつつ、江戸前にささっと蕎麦をたぐる。粋ですねえ。下駄につく雪、熱燗、股火鉢と、冬らしい演出がきめ細かい。直次郎は按摩(東蔵が見事な変身ぶり)に、療養中の遊女三千歳への手紙を託す。一方、弟分の暗闇の丑松(團蔵)は悩んだ末に裏切りを決意する。蕎麦屋の夫婦は家橘、齊入。
場面替わって、しっとりと吉原・大口屋の寮(別荘)。悪事を打ち明け、別れを告げる直次郎を、一緒に逃げたい三千歳(貫禄の時蔵)が「一日逢わねば千日の」とかき口説く。舞台上手の隣家での「余所事(よそごと)浄瑠璃」として、清元「忍逢春雪解(しのびあうはるのゆきどけ)」を演奏する演出が、哀感たっぷり。寮番・喜兵衛(秀調)も2人を逃がそうとするが、捕手に囲まれ、直次郎はひとり駆け出していく。充実してました!

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