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すべての四月のために

PARCO PRODUCE  すべての四月のために  2017年11月

鄭義信(チョン・ウィシン)の作・演出。1944年、日本統治下の朝鮮半島南に浮かぶ小島を舞台に、戦争に翻弄される理髪店一家を描く。コミカルさを前面にだしつつ、苛烈な状況でも恋をし、ジョークを言い合って生き抜く庶民群像をしみじみと。ジャニーズファンが多そうな東京芸術劇場プレイハウス、中央あたりで9500円。休憩を挟み3時間弱。

タッチは終始まったりと柔らかく、吉本新喜劇風だ。大切な告白ほど怒鳴るように喋ったり、やたらポーズをとったり下世話に踊ったり。2012年「パーマ屋スミレ」のような陰影は乏しいけれど、どんなに理不尽な目に遭っても、季節は巡りくると繰り返す乾杯の歌が、胸に染みる。未来の世代に幸せがあれば、そう思うと胸の奥が温かくなる…。

日本名を名乗る4姉妹の恋模様と、国家の対立が招く家族関係の歪みが、物語の軸だ。理髪店を手伝う長女・冬子(西田尚美)は支配する側の将校(近藤公園)と恋に落ち、教師の秋子(臼田あさ美)と歌手志望の夏子(村川絵梨)は日本軍に協力しつつ、夫(森田剛)、元夫(中村靖日)をそれぞれ戦争にとられてしまう。春子(伊藤沙莉)は憲兵(小柳友)と心を通わせるものの、抗日に加担。勝気な母(麻実れい)は戦後、村八分にあい、夫(山本亨)にも先立たれて、ひとり島に取り残されてしまう。それでも時を経て、訪ねてきた孫(森田の2役)との交歓に、一筋の希望が宿る。

西田の健気さが終始、舞台をしっかりと牽引。ストーリーテラーの森田が暗い存在感を抑え、姉妹の間で揺れ動いちゃうダメ男を軽妙に造形して、新たな魅力を発揮した。この人はどこか欠けている雰囲気が、いいんだな。変人と呼ばれながら克明につけていた日記が、やがて孫を呼び寄せることになるわけだし。
4姉妹の残る3人も芯が強く、危うい臼田、蓮っ葉な村川、ハスキーで正義感が強い伊藤と、キャラがくっきりしていた。男たちは悩みがちで、特に長身を丸めるように春子に寄りそう小柳が哀切。大人計画の近藤に渋さが出てきたかな。秋子を慕うピュアな二等兵は稲葉友。中村は飄々として、皿回しまで披露する。やるなあ。
理髪店のワンセットで、窓の向うに時空が広がる感じが巧い。美術は二村周作。
ホワイエには丸山隆平らしき姿もありました。

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