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プレイヤー

シアターコクーン・オンレパートリー2017「プレイヤー」  2017年8月

前川知大の2006年上演作をベースにした新作を、長塚圭史が演出。出演は藤原竜也、仲村トオルという超楽しみな顔合わせ。戯曲、俳優とも高水準だけど、ちょっと凝り過ぎだったかなあ。シアターコクーン中央あたりで1万500円。休憩を挟み約3時間。

ある地方劇場のリハーサル室で、新作の演劇「PLAYER」の稽古が進む。生きている者が、死者の言葉を「再生」するという怖い設定。この劇中劇の虚構がいつしか、作家の言葉を「再生」する俳優たちの現実世界を侵食していく。

前半は劇中劇が中心。個性的な女性・天野真の通夜に、知人の警官(藤原)、瞑想の指導者(仲村)と助手(成海璃子)、友人の主婦(シルビア・グラブ)や会社経営者(木場勝己)、同級生(村川絵梨)、弟(大鶴佐助)が集まってくる。思い出を語り合ううちに、故人の言葉が生きている者をのっとり、その存在がリアルに立ちのぼってくる。まるで夢幻能。このあたりの集団心理が秀逸で、ぐっと引き込まれた。
上演メンバーに比重が移る後半は、劇中劇の設定を踏み越え、カンパニーのプロデューサー(峯村リエ)と演出家(真飛聖)の背後に、亡くなった劇作家の「言葉」がちらつき始める。もし死者の言葉が生き続けるなら、生の重みは変質してしまうのか? 

入れ子構造は知的な実験だけど、やや消化不良かな。個人的には、藤原の位置づけの変化がつかみにくかった。どうしても、カルトに抵抗する後輩役・高橋努の役回りを想定しちゃうせいか。凛々しい真飛のキャラも、目立つ割には曖昧な印象。ほかに演出助手に安井順平、制作に長身の百瀬ゆかりら。
広い稽古場に、シンプルな椅子を並べたり、箱型の部屋を出し入れするスタイル(美術は乗峯雅寛)。

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講談「徳川天一坊」

第6回たっぷり!神田春陽   2017年8月

前座なし、ゲストなし、春陽さんひとりの「長講 徳川天一坊」を聴く会。固有名詞の多い話だけど、リズムがあって聴きやすい。らくごカフェ、自由席の後ろの方で2000円。中入りを挟み2時間。

黙阿弥の歌舞伎でもお馴染み、強烈な悪漢物語のうち、今回は大詰めの4話「紀州調べ」より「伊豆味噌」までを一気に。
ピカレスクロマン部分ではなく、悪を追い詰めていく大岡越前守チームの「刑事」たちの捜査ぶり、さらに大岡夫婦と一人息子があわや切腹、果たして捜査結果の知らせは間に合うのか!というくだりだ。緊迫の連続で、力が入る。目線が時々、天井や左右に揺れるのが気になるけどスピード感は十分。
そして天一坊の正体が明らかになってからの、認めてしまった松平伊豆守の慌てぶり、大岡にゴマをする小役人ぶりは、笑いがたっぷり。面白かったです。

鎌塚氏、腹におさめる

M&Oplaysプロデュース 鎌塚氏、腹におさめる   2017年8月

作・演出倉持裕、「完璧なる執事」鎌塚アカシ(ナイロンの三宅弘城)が活躍するスクリューボールコメディの4作目。さすがの楽しさ、安定感で、3作を超えればもう寅さんへの道かも。今回のマドンナはチャーミングな二階堂ふみだ。本多劇場、最前列で7000円。休憩無しの約2時間。

錦小路サネチカ公爵(大堀こういち)が屋敷の離れで亡くなる。探偵気取りのお嬢さまチタル(二階堂)は、毒舌の叔父・ヤサブロウ(眞島秀和)を探り始め、当然ながらアカシも手助けするが…
密室や時間トリックの本格風味に、死んだはずの公爵がうろうろしちゃう「ゴースト」テイストをふりかけつつ、ラストは亡き母を含めた家族の情でほろりとさせる。まさに寅さんの巧さです。

二階堂はフリフリドレスがよく似合い、歌も披露。三宅と、お馴染みライバルのスミキチ(ペンギンの玉置孝匡)が、ワイン盗難とスイカなど、息の合ったギャグで笑わせる。2人とも執事の衣装で、のっけから汗だくなのが気の毒だけど。さらに草木を枯らしちゃう園丁の矢田部俊(我が家)と、同時にふたつのことができない料理人の猫背椿(大人計画)がからんで、いいリズムだ。大堀が鷹揚な風格で、ギターも巧い。ナイロンの旗揚げメンバーなんですねえ。白スーツの眞島もはまり役。

リカちゃんハウス風の屋敷と離れのセットを、暗転でつなぐ方式(美術は中根聡子)。プログラムに載っていた当代の人気者たち、赤堀雅秋、長塚圭史に大矢亜由美プロデューサーを加えた鼎談も、それぞれの個性が感じられて面白かった。

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音楽宅急便「ボレロ」

クロネコファミリーコンサート音楽宅急便  2017年8月

ヤマトホールディングスが32年続けているというファミリー向けのクラシックコンサート。小さな子供が騒いでいるけど、音が鳴り始めると聴きいる感じがさすが生音です。飯森範親しき、東京交響楽団。かつしかシンフォニーヒルズ、豪華なモーツァルトホールの後方上手端。休憩を挟み2時間強。

事前リクエストでトップだったというチャイコフスキー「眠れる森の美女」よりワルツで、美しく幕開け。地元シンフォニーヒルズ少年少女合唱団がステージ後ろに並んで、音楽宅急便委嘱作品の合唱組曲「あめつちのうた」。林望作詞、上田真樹作曲の、空や風をテーマにしたスケールのある歌だ。合唱団は宮本益光が音楽監督を務め、小学校から高校生まで108人で構成しているそうです。
続いてゲストのメキシコ在住マリンバ奏者・古徳景子が、楽器を紹介。「題名のない音楽会」みたい。マリンバの起源、アフリカのバラフォンは、瓢箪で共鳴させるけど音階はない。珍しいメキシカンマリンバは、共鳴管の先に豚の腸をつけていて、メロディーと同時に金属的な音がびりびり響く。民謡「ラス・チャパネカス(陽気に歌えば)」を楽しく。そして通常のマリンバに替えて、モンティ「チャルダッシュ」。バイオリンでよく聴く曲だ。ジプシーぽい哀愁と、ダンス風の速弾きの変化が盛り上がる。アフリカから中米の文化の流れも感じられて面白い!
前半ラストは聴衆の子供たちをステージにあげて、ドレミだけで合奏できる芥川也寸志「ドレミファソラシド!」。格好良くバイオリンを弾く子もいれば、ピアニカをうまく持てなくて立っているだけの子もいて、可愛いぞ。

休憩後は司会の朝岡聡がシルヴァスタインの絵本を朗読しつつ、三宅一徳作曲の「おおきな木」。仲良しの子供に尽くすリンゴの木の哀愁は、なんだか大人っぽい話だなあ。
ラストはお待ちかねラヴェル「ボレロ」。トロンボーンがちょっと辛そうだったけど、全体に安定していて素晴らしい迫力でした! 再び合唱団が登壇し、会場とともにボレロのアレンジで「故郷」を歌う。
アンコールはニューイヤーコンサート風に、ヨハン・シュトラウス1世「ラデツキー行進曲」。思い切り手拍子して終わりました~ ロビーでは募金活動も。いいコンサートです。

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