« ゴスペラーズ | トップページ | 落語「松竹梅」「わら人形」「自由ヶ丘由来」「粗忽の使者」 »

OTHER DESERT CITIES

OTHER DESERT CITIES  2017年7月

2010年ジョン・ロビン・ベイツ作の家族劇を、「紙の月」などの早船歌江子が翻訳・台本、「狂人なおもて往生をとぐ」などの俊英・熊林弘高が演出。名手・中嶋しゅうが初日舞台上で倒れ、急逝するという、信じられない不幸を乗り越えての公演だ。梅田芸術劇場の主催。年配女性が目立つ東京芸術劇場シアターイースト、上手寄り後方で9500円。休憩を挟み2時間半。

設定はイラク戦争さなかの2004年クリスマスイブ。砂漠の街・パームスプリングスにあるワイエス家に、鬱を患っていた娘ブルック(寺島しのぶ)が帰ってくる。近く出版する小説で、家族の辛い過去を描き、共和党実力者の父ライマン(急遽代役となった斎藤歩が健闘)と高圧的な母ポリー(佐藤オリエ)を告発するという。ちゃらいバラエティー制作者の弟トリップ(中村蒼)、ポリーの世話になりながら反発するアル中の叔母シルダ(麻実れい)をまじえた確執の果てに、真実が語られる…

それぞれに病んだ家族の再生を、白ボックス数個がメーンのシンプルなセットで淡々と描く。ボックスに潜ったり乗ったりする動きや、客席前方でト書きを読んで、シーンを相対化するあたりがスタイリッシュだ。美術は島次郎。
出演陣では佐藤が、折り目正しくペースを保持して、対立する寺島、麻実を寄せ付けない。さすが俳優座出身。中村が屈折を表現して、なかなかの色気を発揮する。肝心の大詰めではヘッドホンをかぶって引きこもっちゃう。

戯曲はベトナム戦争からトランプまで、政治への言及が多いけれど、麻実主演の「炎 アンサンディ」などと比べちゃうと、切迫感は薄い。軸となる母娘関係は、言ってしまえばお馴染みの構図だし。やはり米国のエスタブリッシュメントのお話なのかな。
客席には高良健吾らしき姿も。

遺作となってしまった中嶋さんは、名作「炎…」をはじめ、妻・鷲尾真知子と共演した「狂人なおもて…」や、やはり熊林演出が出色だった2014年「おそるべき親たち」などで観てきました。シビアな物語でも、そこはかとなく色気やペーソスを漂わせて舞台に深みを与える、重要な存在でした。合掌。

20170716_007

20170716_011

« ゴスペラーズ | トップページ | 落語「松竹梅」「わら人形」「自由ヶ丘由来」「粗忽の使者」 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: OTHER DESERT CITIES:

« ゴスペラーズ | トップページ | 落語「松竹梅」「わら人形」「自由ヶ丘由来」「粗忽の使者」 »