« あっこのはなし | トップページ | 鳥の名前 »

NINAGAWA・マクベス

蜷川幸雄一周忌追悼公演 NINAGAWA・マクベス  2017年7月

蜷川幸雄演出の「仏壇マクベス」として、あまりに有名なシェイクスピア劇。1985年英国公演などで世界のニナガワを確立した代表作を観る。圧倒的な様式美、小田島雄志の一部七五調の翻訳で、死と隣り合わせの運命、変わらない人の愚かさを描きだす。
個人的に度肝を抜かれるほどではなかったけれど、海外で評判だったのがうなづける鮮やかさだ。今回は香港からの凱旋公演で、このあと英国、シンガポールに展開。年配客が目立つ、彩の国さいたま芸術劇場大ホール、中ほど上手寄りで1万2000円。休憩を挟み約3時間。

安土桃山風セットは、ニナガワのひらめきを妹尾河童が形にしたという。おびただしい死者と向き合う仏壇、端正な紗幕の障子と板塀、不吉きわまりない赤い月、復讐の連鎖を見守る十二神将像。3人の魔女は花かんざしの女形で、幣を振り、登場シーンは一面に桜吹雪。バーナムの森も満開の桜で、無常感をかきたてる。
辻村寿三郎の衣装もきらびやか。マクベス夫妻の大きなかんざしを刺した髪形が不思議だ。国崩しの「王子」か、高貴なおすべらかしか。

登場人物で一番目立つのは、実は二人の老婆(羽子田洋子、加藤弓美子)かもしれない。客席から登場して仏壇の扉を開け、左右端に座り込む。気ままにお弁当を食べたり、千羽鶴を折ったり編み物をしたり。敵味方なく、残酷な死には声をあげて嘆きつつ、どろどろ権力闘争を傍観し続ける。無力でしたたかな庶民。
マクベスの市村正親は気合十分。滑舌が気になるものの、大詰め、老いを強調したメークでの絶唱「思えば長いこと生きてきたものだ…ついには歴史の最後の瞬間にたどりつく」が深い。マクベス夫人の田中裕子は悪女というより、ひたすら夫を思う造形で、錯乱シーンがさすがに巧い。
布陣は盤石。裏切られる盟友バンクォーに辻萬長、マクベスを倒すマクダフに大石継太、ダンカン王に瑳川哲朗、門番に石井愃一、魔女は4代目雀右衛門門下の中村京蔵ら。立ち上がる王の息子マルカムでは、ネクストシアターの堅山隼太が健闘。

巨大な鏡の「十二夜」、薔薇が降りしきる「ヘンリー六世」、被災地に涙した「たいこどんどん」、雨の非日常感が圧巻だった「血の婚礼」…。改めて蜷川さんの稀有な才能を思う一日でした。

20170729_008

20170729_013

20170729_019

« あっこのはなし | トップページ | 鳥の名前 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: NINAGAWA・マクベス:

« あっこのはなし | トップページ | 鳥の名前 »