鳥の名前
コムレイドプロデュース 鳥の名前 2017年7月
人気の赤堀雅秋作・演出。「屈指のダメ人間」揃いの日常を襲う、トホホな事件を温かく描く。名前なんかわからなくても、鳥はただ生きて、空を行くだけ。演劇好きが集まった感じの下北沢ザ・スズナリ、ほぼ中央で5500円。休憩無しの2時間。
ボロアパートの大家・金子(最後の舞台、と強調する新井浩文)が、よせばいいのに住人の金森明菜(名前が謎。ナイロンの村岡希美)を、寂しい自転車屋の中村さん(赤堀)に紹介する。金森がつきまとわれていると聞き、何故か友人の池田(今回の公演の言い出しっぺらしいハンチョー・山本浩司)を連れて、元カレの東(お馴染み荒川良々)、舎弟・平田(松浦祐也)に会いに行くが、よりによって東に因縁をつけにきたチョー危ないヤクザ柳(水澤紳吾)に、まとめて拉致されちゃう。
戯曲のいい味わいを、俳優陣が個性全開で肉付けする。まず新井の飄々加減が絶妙だ。痴漢冤罪の過去を持つ赤堀、そろそろ身をかためるつもりの山本という、冴えない凡人に寄せるシンパシーが切ない。
飛び道具系もさすがだ。いきなりサウナでスローモーションの荒川は、持ち前の子供っぽさで、粗暴なキャラをチャーミングに見せちゃう。村岡はわざとらしさが真に迫る。何より水澤の、意味不明な切れっぷりが凄まじい。「クヒオ大佐の妻」では驚きの親子2役だったしなあ。
対して振り回されてばかりの山本と、スナックで働く彼女・井端珠里の透明感が爽やかだ。事件の発端となる地下アイドルに根本宗子、そのファンで、ファミレス店員に飯田あさと。シンプルな2段セットは袴田長武。マニアックかなあと思ってたけど、チケットがとりにくいのもちょっと納得。