少女ミウ
M&0playsプロデュース「少女ミウ」 2017年6月
大好きな岩松了作・演出。避難解除への違和感、被災者に無責任に共感することへの怒りを強く感じさせる、ずっしり重い戯曲だ。社会性をはらみつつ、本音の見えない男女の愛憎劇になっているのも岩松さんらしい。通路まで丸椅子ぎっしりの、ザ・スズナリ後方で5500円。休憩無しの2時間強。
ミウ(黒島結菜)と母、姉夫婦は事故責任者である父の家族として、あえて避難指定地域に住み続けたが、肝心の父は失踪。その父の不倫の娘ユーコ(金澤美穂)を招いて食事した後、衝撃の結末を選ぶ。ひとり残されたミウはユーコと共に、被災地復興を伝えるテレビシリーズに出演するようになるが、メディアは欺瞞に満ち… いわくありげなキャスター広沢(堀井新太)、少女2人の3角関係、そして父失踪を巡るミステリーが、緊迫感を高めていく。
場面は、ミウ一家がテーブルに並んだ悲劇の一日と、対照的にちゃらいテレビ制作の舞台裏とを、行きつ戻りつする。冒頭とラストでは、未来への希望を断ち切る人災の罪深さが暗示され、息苦しいほどだ。セット転換ごとに上下左右から幕が閉じ、セット中央の祭壇のようなキャンドルなどが目に残る。美術は二村周作に師事した原田愛。
「ごめんね青春!」の黒島は、持ち前の芯の強さ、暗さで存在感を発揮。対する長身の堀井も屈託を抱え、なかなかの切なさだ。ショートカットの金澤は立ち姿の良さと、しらじらしさでライバル役がはまっていた。テレビ局スタッフなどの富山えり子、新名基浩が、丸顔コンビで笑わせるのが、ちょっと救いかな。ほかにテレビ局部長などで、さいたまネクスト・シアター1期生の川口覚、ミウの姉などで岩井七世ら。
思えば私の初スズナリは2011年2月、岩松作「国民傘」だった。岩松さんはそれ以来のスズナリ登板とか。未曽有の災害を経て、私たちは何を学んだのか。いろいろなことを考えずにはいられない舞台でした。
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