ジークフリート
ジークフリート 2017年6月
新国立2016/2017シーズンの締めくくりは、もちろん飯守泰次郎音楽監督のワーグナー愛に溢れる指揮で、楽劇「ニーベルングの指環」第2日「ジークフリート」だ。男性客が多い新国立劇場オペラハウス、1階通路から2列目、中央の絶好の席で2万4300円。なんと45分の休憩2回を挟み、6時間弱! 東京交響楽団。
2010年のトーキョーリング、2011年のMETライブビューイングから久々に、この大作シリーズにチャレンジした。やっぱり12年の中断をへて作曲されたという、3幕ラストの長大な2重唱が圧巻。やんちゃ放題のイノベーター、ジークフリートが炎を踏み越え、運命の女ブリュンヒルデと恋に落ちて、初めて世界を認識し、恐れを知る。
ハープ6台など、ピットいっぱいのオケを向こうに回し、ウィーン国立劇場2016年公演などでお馴染みのヘルデンテノール、ステファン・グールド(アメリカ)が押しまくる。それをリカルダ・メルベート(ドイツのソプラノ)が堂々と迎え撃って、息をつかせない。幕切れで槍とか鎧とか、すべてをブン投げちゃうのが爽快だ。
巨漢グールドは出だし抑え気味だったけど、きちんと調子をあげ、1幕「鍛冶の歌」は朗々。ティンパニの不穏な「悪魔の音階」から始まる2幕も、ホルン1本と弱い弦楽で始まる「森のささやき」が、自然の美しさを思わせて優美だ。
さすらい人の渋いグリア・グリムスレイ(アメリカのバスバリトン)が、1幕から惜しみなく声量を披露。ハットが似合う姿の良さもあり、袖でブリュンヒルデ登場を見届けてから、去る演出に余韻がある。3幕で地底から現れるエルダのクリスタ・マイヤー(バイロイト常連のアルト)も存在感たっぷりだ。ミーメは演技派アンドレアル・コンラッド(ベルリン宮廷歌手のキャラクター・テノール)だ。
飯守さんならではの、シリーズを通じたキャスティングは本当に充実している。森の小鳥は5羽もいて、鵜木絵里、吉原圭子、安井陽子、九嶋香奈枝+バレエ。衣装がセクシー過ぎ。
故ゲッツ・フリードリヒ演出、フィンランド国立歌劇場のプロダクションは照明暗め、かなりシンプルだけどダイナミック。1幕は斜めの2階部分と木々の縦の組み合わせ。2幕のファフナー大蛇は空気で膨らむスタイルで、何故か手がある。3幕1場は舞台いっぱいの大ゼリ、赤と黄緑の照明が深遠で印象的。火の山は勾配のある、つややかな四角い床でした。
長尺とあって、入り口外まで使って、カレーやジークフリート弁当など飲食、およびグッズの売り場を充実させており、感心。椅子もたっぷりあって工夫してました。客席には赤川次郎さんらしき姿も。
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